【Team '26】「使うAI」から「作るAI」へ - Atlassian Studioで組織の"AI民主化"が加速する
2026年06月05日
濵田 翔(プロダクト&サービス開発部) hamada.sho
2026年5月上旬に、米国カリフォルニア州の「アナハイム・コンベンションセンター(Anaheim Convention Center)」にて開催された、Atlassianの公式カンファレンス「Team '26」に、リックソフトのメンバーが現地参加しました。

Team '26 Main Stage(Anaheim Convention Center)
会場には世界中から数千人規模のAtlassianユーザーやパートナー、開発者が集まり、Keynoteが行われる朝から、夜のディナー会場まで、話題はほぼAI一色でした。その中でも、私が最も「知りたい、使ってみたい」と感じたのが、Rovo Studio(以下、Studio)です。
https://www.atlassian.com/ja/blog/team26-rovo-studio
本記事では、Team '26における最新情報と、リックソフト社内で進めている検証を踏まえて、Studioの概要と、簡単な利用方法をお届けします。
1.「誰でも使えるAI」から「誰でも作れるAI」の時代へ
ここ数年、AIの話題を耳にしない日はないほど、すさまじいペースで進化してきました。しかしながら、Team '26のスクリーンには、次のような数字が映し出されました。
- AI投資から ROIが出ていると確信できている経営層は6%にすぎない
- 知識労働者の 85%が「AIツールはある」と回答する一方、実際に日々のワークフローに組み込めているのは29%
- AIを「チームメイト」と見なせている人はわずか15%
- こうした AI投資の断片化のコストは Fortune500全体で1,610億ドル規模に達する(Atlassian調査)
AI投資を成果に結びつけているのは、最新モデルを使っている企業ではない。自社のワークフローに合わせてAIを組み合わせ、エンドツーエンドで業務を回している企業だ、というものです。
Team '26の Keynoteでも、メルセデス・ベンツ社が Rovoエージェントを使ってテスト・欠陥管理担当者の時間の85%を効率化し、品質を90%向上させた事例や、インターメディア社がわずか6つの Rovoエージェントだけで月50時間以上の作業を削減した事例が立て続けに紹介されました。
これらに共通しているのは、汎用の AIチャットを「使った」のではなく、自社のワークフローに溶け込むエージェントや自動化の仕組みを「作った」という点です。
「使うAI」から「作るAI」への転換。これは、コードを書ける一部のエンジニアだけでなく、それぞれの部門の業務を一番理解している人たちの手に取り戻そうとする試みであり、その象徴となるのが、この Studioです。
2.Studioとは何か

Studioスタート画面
[Studioとは、Atlassianプラットフォーム上で AIエージェント、自動化ルール、カスタムアプリを作れる、統合AI開発環境です。]
Atlassian公式ページでは、このように定義されています。
「Rovo スタジオは、あらゆるチームが AI を構築、デプロイ、管理できる統合されたプラットフォームです。エージェントから複雑な自動化まで、コードは不要です」
要点は次の3つです。
(1) 統合された「制作スペース」
これまでの仕組みでは、エージェントを作る Agent Builder、自動化を行う Automation、カスタム拡張を作るForgeという、別々の入口にわかれていました。Studioは、それらを一つの入口(studio.atlassian.com)にまとめ直したものです。
(2) コードを書かない「ノーコード」起点
スクリーンショットの中央にある「What are we building?(何を作りますか?)」というプロンプト欄に、自然言語で課題の内容を書くだけで動き始めます。いわゆる開発環境、ターミナルや webインフラなどの準備は不要です。
(3) Forgeへの展開も容易
ノーコードで作ったアプリをアップデートする際には、そのまま Forge SDKによって本格的なコーディングに移行できます。プロトタイプの作成から本格的な開発が分断せず、シームレスに移行できる設計です。
前提として押さえておきたいのが、Studioは Rovoがベースとなっているという点です。Rovoが有効化されている Atlassian Cloudをご利用の組織であれば、Studioもそのまま利用可能です。
3.Rovo全体における Studioの位置づけ
Studioについての疑問として「Rovoそのものと何が違うのか」「Rovo Devとは別物なのか」といったものがあります。これらを整理すると、Rovoと呼ばれるものの実態は、以下の4つで構成される AIプラットフォームであるということです。
| コンポーネント | 役割 |
|---|---|
| Rovo Search | Jira/Confluence/JSM+50以上のサードパーティツールを横断するセマンティック検索システム。 |
| Rovo Chat | 会話形式での検索・分析・アクションが可能で、150以上の推論ステップと120以上のスキルを持つ。 |
| Rovo Agents | 業務プロセスを自動化するエージェント。組織固有の業務をベースに作成可能。 |
| Rovo Studio | 上記のエージェント、自動化、アプリ自体を構築するための統合開発環境。 |
すなわち、Studioは、Rovo全体の中で「使う」側ではなく「作る」側にあたります。Rovo Chatや Rovo Searchは誰でもすぐに使える AI体験ですが、それらを自社の業務に合わせて拡張・カスタマイズする入口となるのが Studioです。
押さえておきたい「3つの違い」
他にも、よく混乱されがちなポイントを整理します。
Rovoと Rovo Dev
Rovoは全社向けの AI検索・チャット・エージェントプラットフォームで、全有償エディションに同梱。
一方の Rovo Devは開発者向けのコーディング特化型エージェントで、個別の料金体系を持っています(別プロダクト扱い)。Rovo Devは Atlassian製品と連携し、Bitbucket/GitHubのコードレビューや、トラブルシューティングといった開発支援に特化しています。
■参考(RovoとRovo Devの料金体系)
Studioと Forge

Studioはノーコード/ローコードでの「制作スペース」で、Forgeは開発者向けのインフラ・コーディング基盤(Atlassianクラウド専用のフルマネージド拡張プラットフォーム)です。Studioで作ったアプリはForge上で動作するアプリとしてデプロイされるため、開発者へバトンタッチして機能の拡張を行うこともできます。Studio(自然言語)から Forge(コードベース)への流れは基本的に一方通行ですが、Studio上での繰り返し修正は可能です。
なお、現在、Forgeは使用量ベースの価格モデル(無料枠あり)に移行しています。
▷参考(Forgeの詳細)About Forge
Studioと既存のAutomation
Jira / Confluenceの機能としての Automationは健在ですが、新たに Studio上で「対話的に自動化ルールを組む」こともできるようになりました。Studioが生成した自動化ルールは、Atlassian Automationの上で動きます。
4.Studioでできること:3つの柱
Studioで作れるものは、大きくAIエージェント/自動化ルール/Forgeアプリの3つに整理されます。Team '26で発表された最新版では、ユーザーは「どれを作るか」を意識する必要すらありませんが、これら3つの柱を見ていきます。
4-1.AIエージェントの作成
例えば、Studioのプロンプト欄に「毎朝8時に Googleカレンダーを確認して、今日やるべきタスクを Jira作業項目として登録したい」と書くだけで、以下を含むカレンダータスク作成エージェントが生成されます。
- エージェント名と概要
- 使用するスキル(例:Get Google calendar events、Create work item)
- 動作のステップ
- 会話のきっかけ
日本語のプロンプトをそのまま入力しても、Rovoが自動的に解釈し、必要なドキュメントを検索しながら設計を完了します。手動でゼロから組み立てる手間がなくなり、これまでかかっていた工数が圧倒的に削減されます。
4-2.自動化ルールの作成

Studio Agents一覧(現地撮影)
エージェントを作成すると、それを呼び出すスケジュール自動化ルールもセットで自動生成されます。
上記の例であれば、
- ルール名:GoogleカレンダーイベントをJira作業項目として登録
- トリガー:スケジュール実行(毎週月〜金、8:00AM)
- アクション1:エージェントを使用(上記のカレンダータスク作成エージェント)
- アクション2:監査ログに追加(エージェントの動作を記録
といった構成で、ユーザーがレビュー可能な形で出来上がります。エージェント単体ではなく、エージェントと自動化ルールが想定されるフローに沿って設計される点が、Studioの大きな特徴です。
現在はベータ版のため、実行可能な機能に制限があったり、接続できる外部ツールが限られていたりしますが、このあたりは今後拡張される見込みです。
4-3.Forgeアプリの開発(ローコード)

3つ目の柱が、自然言語(プロンプト)で Forgeアプリそのものを作れることです。たとえば「Jiraの依存関係とリスクを可視化するダッシュボードがほしい」と書くと、Studioは次の3フェーズで処理を進めます。
Define(定義)フェーズ
Studioがドキュメントを自動検索し、アプリのプラン(アプリ名、概要、モジュール、主要機能)を提示します。まずは機能要件・技術要件が自動生成され、これらは、自然言語で何度でも修正できます。
Build(構築)フェーズ
「Build app」をクリックすると、Studioが Forgeアプリのコードを生成します。プレビューで UIを確認しながら進めることができ、ビルド時間は通常10分ほど。眺めているだけで、アプリが徐々に構築されていきます。
Publish(公開)フェーズ
「Publish」をクリックすれば、Forgeプラットフォーム上へデプロイされ、指定したサイトへインストールできます。
5.Team '26で発表された Studio
ここまでが「これまでのStudio」です。
Team '26では、さらにブラッシュアップされた内容が展開され、2026年5月6日に GAとして公開(一般提供開始)されました。

Rovo Agentアーキテクチャ図(現地撮影)
「何を作るか」を意識しなくていい
これまでは、ユーザー自身が「エージェントを作るのか、自動化を組むのか、アプリを作るのか」を決めてから入る設計でした。現在のバージョンでは、目的に応じて、その区別を Studioが自動で行います。
Keynoteで紹介されていたオンボーディング自動化を例にとると、
「新メンバーがチームに入ったら、役割に応じた個別オンボーディング計画をテンプレートとコンテンツから作って、面談時間を確保して、質問に答えて、進捗を追跡してほしい」
このプロンプト1行から、Studioは次の3つを組み合わせて構築してくれます。
- 自動化ルール:Jiraチケット作成をトリガーに、歓迎動画や業務資料、割当プロジェクト、今後90日の計画を MicrosoftTeamsに投下
- エージェント:新メンバーからの質問に随時応答
- ダッシュボードアプリ:マネージャーに対して上記の進捗を可視化
ユーザーが書いたのは「課題」のみ。ここから「何を作るか」は Studio自体が判断するという体験が、新バージョンのポイントです。
あわせて発表された関連機能
- MCP(Model Context Protocol)対応:数千の外部スキル・ツールを Rovoエージェントから利用可能
Rovo makes AI-native teamwork real for the enterprise - Inside Atlassian - Teamwork Graph MCP/CLIの公開:Cursor、Codex、Claude Codeなど任意の AIから同じコンテキストを参照可能
https://www.atlassian.com/blog/company-news/teamwork-graph-team-26 - Agent Permissions in Studio:エージェントの作成者と利用者を、管理者が分離して制御
Rovo agent permissions and governance | Rovo | Atlassian Support - Max Mode(より複雑な推論)、Rovo Desktop App、Rovo CLIなど、Rovoそのものの拡張
Get started with Rovo Desktop | Rovo | Atlassian Support
6.Studioで"成果"を出している企業/チーム
Team '26の各セッションと公式発表で紹介された、Studio/Rovoエージェントで成果を出している代表的な事例を一覧で整理します。
| 企業 | 業種 | 成果(1行サマリ) | 出典 |
|---|---|---|---|
| Mercedes-Benz | 自動車製造 | テスト・欠陥管理で担当者時間の85%を削減、品質指標90%向上 | Atlassian社ブログ |
| Intermedia | クラウド通信 | Rovoエージェントで製品リリース支援を効率化、月50時間以上を削減 | Atlassian社ブログ |
| HarperCollins | 出版 | 会議・プロジェクト・ドキュメント間の調整を自動化し、手作業を4分の1に圧縮 | Atlassian社ブログ |
| Cisco | IT/ネットワーク | プログラムマネージャの10時間タスクを15分に短縮 | Studio製品ページ |
| ServiceRocket | ITサービス | Loom議事録からRovoがクリエイティブブリーフを自動生成、マーケティングキャンペーンの立ち上げ生産性が12倍に | Team '26 セッション内 |
| DocuSign | 電子契約 | リリースノート・テスト・ドキュメント作成の各業務を効率化、ドキュメント/チケット作成時間平均75%短縮 | Team '26 セッション内 |
業種、組織規模、業務カテゴリがいずれも分散している点が注目に値します。製造業から出版・通信・ITまで、業務を問わず具体的な成果が出ています。
7.利用の流れ:5ステップで見る Studio
最後に、実際にどう操作するのかを、5ステップで簡単にご紹介します。
Step0:Studioを開く
Atlassianのアプリスイッチャー(左上の格子アイコン)から「その他(...)」を展開すると、Studioへのリンクがあります。
(ハンズオンでは、Studioは別タブで開いて、操作画面と説明資料を左右に並べる方法が推奨されていました)
Step1:スタート画面

Studio起動時エントリ画面「What are we building?」
中央のプロンプト欄に、ユーザーの課題や作りたいものを自然言語で記述します。左のナビには For you(ユーザー専用)/Browse(参照)→ Skills(スキル)/Build(ビルド)→ Apps(アプリ)/Agents(エージェント)/Automation(自動化)などが並びます。
なお、スタート画面では、入力欄の下部に、アプリのアイデアとなるサンプルプロンプトがいくつか提示されます。ゼロから書き出すのが難しいときは、これらをベースにしてみるのもいいかもしれません。

Studioのモーダル版ページ
また、Rovo Chatの中からモーダルで開く形態もあり、資料やチケットを参照中に浮かんだアイデアから対話を始められます。
Step2:対話的ヒアリング

日本語での対話ヒアリング
例えば「アプリを構築したい」とだけ送ると、Studioは3つの観点で深掘りしてくれます。「AIに何を頼めばいいかわからない」「プロンプトを書くのが苦手」という方でも、Studio側から必要な情報を引き出してくれるので、誰でも簡単に始められます。
Step3:App Specification(アプリ仕様書)の自動生成

App Specificationの自動生成画面
対話を通じて要件が固まると、Studioは App Specification(アプリ仕様書)を自動生成します。生成される項目は次のとおりです。
- Summary:アプリの概要
- Modules:使用するモジュール(例:Jira project page、Function(resolver))
- CoreCapabilities:主要機能の説明
- UI:UIコンポーネントと実装方針
- API・エンドポイント:呼び出すJira Cloud REST API
- Datastore:スキーマ、バリデーション、マイグレーション要件
ここが Studioの最も重要なポイントです。ブラックボックスではなく、人間が読める仕様書として中間成果物が提示されるので、アプリのビルド前にレビューや修正を実施できます。この修正もプロンプトで行えるので、「JQLに critical優先度の条件を追加して」「グラフは縦棒ではなく横棒にして」といった形で対話を重ねるだけで、仕様がどんどん洗練されていきます。
Step4:Build app(およそ10分程度)
仕様を承諾して「Build app(ビルド)」をクリックすると、Studioが裏で Forgeアプリのコードを生成し、テストを実行します。通常10分ほどかかり、非同期で処理が実行されます。コードの生成に失敗した場合でも、プロンプトでデバッグ依頼ができます。
Forgeの枠内で構築されるため、出来上がったアプリは Atlassian Cloudの標準的なセキュリティ・ガバナンスに沿って動作します。インフラも含めて自動管理されるので、安心して使い始めることができます。
Step5:アプリ一覧で運用管理

Studioのアプリ一覧画面(実画面のため要確認)
構築済みのアプリは Studioの「すべてのアプリを表示」から一覧で管理できます。各アプリには「アプリを編集」「アプリ詳細を表示」のリンクが用意され、この画面にも「Rovoでアプリを作成」ボタンが設置されています。
上部に「アクセス権のあるアプリがここに表示されます」と記載されているように、アプリ作成者自身だけでなく権限を付与されたメンバーにも表示されるため、組織内での共有・管理も容易です。
ここまで、アプリのコードは一行も書いていません。「課題を伝える → Studioが仕様を整理する→ビルドする」という流れが、Studioの標準的な使い方です。
おわりに:リックソフトとして
Studioはベータ/GAを組み合わせた段階的なリリース中ですが、リックソフトの社内ではすでに具体的なユースケースの検証と社内ナレッジ化を進めています。
「自社で Studioを試したいが、どこから始めるべきか」「ガバナンス面の検討が先に必要なのではないか」「既存の Atlassian構成にどう乗せるか」──こうしたご相談は、ぜひお問い合わせフォームからお問い合わせください。
Rovo Studioにより、技術的な制約を受けることなく、どなたでもアプリを作ることができるようになりました。「使うAI」から「作るAI」への転換は、単にツールを導入するということではなく、組織としての能力を新たに獲得することに他なりません。私たちも、これからの時代へ向けて、お客様とともに歩んでいきたいと考えています。
濵田 翔(プロダクト&サービス開発部) hamada.sho
この記事を読んだ⼈におすすめのページ
本情報はブログを公開した時点の情報となります。
Software Collection
Jira Service Management
Customer Service Management
Assets
Rovo
Focus
Jira Align
Talent




【Team '26】「使うAI」から「作るAI」へ - Atlassian Studioで組織の"AI民主化"が加速する
情報系学部卒じゃない新卒エンジニアがAI・DX室で1年間もがいて気づいたこと
【Team '26】AtlassianとDropbox 2社の事例から読み解くAI活用のヒント
【Team '26】マツダ株式会社が登壇!Teamwork Graphで実現する「ツールではなく仕事に焦点を当てる」AXの姿