【Agileノウハウでレガシーシステムの強化を実現 】ベトナムの通信会社 Viettel社のアプローチ
2026年06月10日
リックソフト株式会社 海外事業部 General Manager
甲斐 博 Hiroshi Kai
リックソフトの海外事業部の甲斐です。「ベトナム企業と協業」というと、IT業界では「人件費の安い国でのオフショア開発提携先」という文脈で語られることが多いのですが、まったくその印象が覆される日々を送っています。
ベトナムの IT企業の中には、アジャイルや AIなどの先進的な技術・フレームワークを取り入れ、解決難易度の高い課題をクリアしている組織もあるのです。
今回は、リックソフトと資本提携関係にあるベトナムの Atlassian Platinum Solution Partnerである BiPlus社が Viettel(ベトテル)社で実現した、巨大レガシーシステムの拡張・安定稼働実現、および運用コスト削減の事例を紹介します。
(*本記事は、BiPlus社の事例 How BiPlus enhanced viettel's BCCS system to boost growth in 10 nations をもとに作成しています)
10カ国に展開する通信会社の心臓システムが技術的負債に...どうすれば?

ベトナム国防省が所有・運営する「Viettel(ベトテル)」は、ベトナム国内の携帯電話市場で50%のシェアを誇る、同国最大手の通信会社です。世界で最も急成長している電気通信企業トップ15にも数えられており、2000年代後半からミャンマー、ラオス、東ティモール、ハイチ、ペルー、モザンビークなど、通信インフラが未発達だった国々へ積極的に進出し、成功を収めてきました。
こうしたグローバル展開に伴い、複数国における膨大な課金・契約情報と顧客データを一元管理するため、Viettel社は自社で「課金・顧客ケアシステム(BCCS:Billing and Customer Care System)」を開発しました。BCCSは、同社がトップシェアを誇る海外事業の請求・顧客管理を根底から支える、極めて重要な基幹システムです。
しかし、稼働開始から8年が経過し、このシステムは徐々に深刻な「技術的負債」となりました。維持・管理には膨大な労力とコストがかかり、結果として、Viettel社のさらなる事業拡大(高いビジネス目標)に向けて、システムを効率的かつコストを効果的にサポートすることが困難な状況に陥っていたのです。
この差し迫った課題を解決するため、Viettel社はビジネスパートナーとして BiPlus社を指名。システムの拡張性を向上させ、新機能の実装を可能にするシステム強化プロジェクトを共同で始動しました。
8年が経過した基幹システムを強化する上での課題
運用効率の低下、ユーザー体験の悪化、およびメンテナンスコストの増大に直面していた Viettelは、包括的かつ迅速なシステム刷新(アップグレード)を緊急に必要としていました。しかし、これほど大規模で膨大なデータを扱う基幹システムを、極めて限られたスケジュールの中で強化することには、多くの困難が伴いました。
- 多様なステークホルダーの関与: それぞれ異なるニーズ、優先順位、視点を持つ多くの関係者が深く関わっていたこと。
- 厳しいタイムライン: ビジネス目標を達成するため、迅速な実装と厳しい納期が求められていたこと。
- 膨大なデータ量: さまざまなソースから集約・分析・変換しなければならないデータが極めて大量であったこと。
Viettel社が求めていたのは、「自社のビジネスを停滞させず、日々の業務に支障をきたすことなく、安全にシステムをアップグレードできる解決策」でした。
そこで、レガシーシステムの近代化やアジャイル移行で豊富な実績を持つ BiPlus社がパートナーとして選ばれました。同社は、これら複雑な課題に同時に対処するには「アジャイル(Agile)」アプローチが最適であると判断し、システム改革に着手しました。
効果的なソリューションによるシステムアップグレードの実践
BiPlus社はアジャイル手法を採用し、継続的かつ効率的なデリバリーを実現する最先端テクノロジーを活用して、包括的なシステムアップグレードを実施しました。
1. 期待に応える品質を保証する「アジャイル手法」の採用

BiPlus社は、50名以上の優秀な開発者からなる8つの専任開発チームを編成し、アジャイル手法を導入しました。Viettel社と BiPlus社間の緊密なコミュニケーションを重視し、フィードバックサイクルを高速化することで、進化し続けるビジネスニーズに確実に対応できるシステムを作り上げました。
スクラム(Scrum)フレームワークを実装することで、開発チームは複雑な課題をより小さく管理しやすいタスクへと分解。これにより、開発チームが問題に簡単かつ効率的に対処できるようになっただけでなく、高品質なプロダクトを迅速にデリバリーすることが可能になりました。さらに、過去のプロジェクトにおけるベストプラクティスを応用したことで、開発プロセスをさらに加速させました。
2. スケーラビリティと柔軟性を備えた「最適化された技術スタック」の活用
膨大なデータ量を効率的に処理するため、以下のような信頼性が高く成熟した技術を導入しました。
- NoSQL: 多様なデータソースをシームレスに統合。
- Kafka: リアルタイム統合を合理化し、スムーズなデータフローを実現。
- Redis: 一時データおよびリアルタイムデータの保存と取得を最適化。
上記技術スタックにより、システムのパフォーマンスに影響を与えることなく継続的なアップグレードや改善が可能となり、高いスケーラビリティ、柔軟性、処理速度を実現しました。
3. スムーズなコミュニケーションを実現する「プロジェクト管理ツール」の活用
BiPlus社の Atlassian Platinum Solution Partnerとしての豊富な実績を活かし、プロジェクト管理ツール(Jira/Confluence等)をフルに活用しました。すべてのチームがリアルタイムでタスクの確認、コメント、進捗管理を行える環境を構築。プロジェクト期間中、ステークホルダーへのタイムリーな情報共有とエンゲージメント維持にも大きく貢献しました。
4. タイムリーなアップデートのための「定期的なアライメント・ミーティング」の実施
定期的なアライメントセッション(同期会議)を設けることで、関係者全員が常に最新情報を共有し、迅速な情報伝達を可能にしました。この協調的なアプローチにより、マイルストーンを予定通りに達成することができました。
新しい柔軟なシステムが、10カ国におけるシームレスなビジネス運営を支援

この取り組みにより、Viettel社は以下の成果を達成しました。
- システムの安定維持: Viettelが展開する10カ国すべてにおいて、従来の「BCCS 1.0」システムの安定維持に成功。
- 次世代システムへの移行: 最大1万人規模の従業員と約5,000万人の契約顧客のニーズに対応できる、スケーラブルなアーキテクチャを持つ「BCCS 3.0」へのアップグレードを完了。
- スムーズな大規模データ移行: 約5,000万人の加入者データ、5,000〜1万人規模の従業員ユーザーデータ、および1日あたり平均1億〜2億件にのぼるデータアクセスボリュームを伴うデータ移行を無事完了。
- 極めて高い稼働率: 年間ダウンタイム「5分未満」という高い安定性を誇る、24時間365日の継続的な安定稼働を実現。
- 圧倒的なスピード感: この基幹システムの刷新・移行プロジェクトは、2025年2月に始まり、同年10月にリリースを完了しました。日本のエンタープライズ開発の常識(数年規模のロードマップ)を覆し、わずか8ヶ月で完遂。これを可能にしたのは、BiPlus社の徹底したアジャイル体制です。
拡張性の高いアーキテクチャ設計と複雑なデータ移行プロジェクトにおける BiPlus社の豊富な経験を活かし、Viettel社の BCCSをより柔軟なシステムへと移行させることに成功しました。このコラボレーションの成功は、Viettel社のような先進的なグローバル企業に対し、カスタマイズされたソリューションを提供する BiPlus社の高度な技術力を証明するものです。
巨大ビジネスの持続的な成長を支える、信頼できるパートナー選び
BiPlus社の専門知識は、国境を越えたシームレスなユーザー体験を提供しつつ、Viettel社の注文管理と顧客データ処理を最適化しました。
BiPlus社は単にシステムをリリースして終わりではなく、現在も引き続き日々のメンテナンス(保守・運用)を主導し、年間ダウンタイム5分未満という極めて高い信頼性を裏側から支え続けています。
リックソフトとしても、資本提携パートナーである BiPlus社が、同社のグローバルな成長戦略に「開発から運用フェーズまで」大きく貢献できていることを誇りに思います。
急速に変化する現代において、テクノロジーはビジネス成長に不可欠です。時代遅れのシステムが「技術的負債」となり競争力を失い、ビジネスの足を引っ張る状況は避けるべきです。
インフラのアップグレード、業務効率化、Atlassianツールやアジャイル導入による開発プロセス改善をお求めの際は、ぜひリックソフトにご相談ください。BiPlus社と密に連携し、お客様のビジネス成長を全力でサポートします。
リックソフト株式会社 海外事業部 General Manager
甲斐 博 Hiroshi Kai
本情報はブログを公開した時点の情報となります。
Software Collection
Jira Service Management
Customer Service Management
Assets
Rovo
Focus
Jira Align
Talent

【Agileノウハウでレガシーシステムの強化を実現 】ベトナムの通信会社 Viettel社のアプローチ
【Team '26】「使うAI」から「作るAI」へ - Atlassian Studioで組織の"AI民主化"が加速する
情報系学部卒じゃない新卒エンジニアがAI・DX室で1年間もがいて気づいたこと
【Team '26】AtlassianとDropbox 2社の事例から読み解くAI活用のヒント