リックソフトブログ

2021年08月24日

2021年オープンソースライセンス:トレンドと予測

Author

澤田 深雪 Miyuki Sawada

澤田 深雪</mt:Var>

  

弊社では、オープンソースの脆弱性管理・コンプライアンス管理ツールであるWhiteSource(ホワイトソース)を販売しています。

今やOSSライセンスを使ったソフトウェア開発は90%以上とも言われている中で、これらの管理をスプレッドシートを使い手作業で確認をしている、あるいは他のツールを使用しているが壁に当たって考えている方々に是非こちらのブログをお読みいただき、WhiteSourceのツールに興味を持っていただけたらと思っています。

本ブログはWhiteSorce社に了承を得て翻訳をしたものになります。

今回は全6回のうち3回目、「2021年オープンソースライセンス:トレンドと予測」というブログをご紹介します。

■オープンソースライセンス、2020年に見られたトレンド

2020年の終わりが近づいているこの時期は、オープンソースライセンスの使用状況に今年どのようなトレンドが見られたのかを過去と比較しながら確認しておく良いタイミングです。

私たちの研究チームは、2020年に最も人気のあったオープンソースライセンスは何だったのかを知るため、WhiteSourceのデータベースから情報を集めました。このデータベースには、200以上のプログラミング言語をカバーする、400万以上のオープンソースパッケージ、13,000万のオープンソースファイルが格納されています。

調査の結果からわかったことは、パーミッシブ型オープンソースライセンスの使用は増加が続いていること、そしてコピーレフト型ライセンス、特にGPLライセンスの使用は減少が続いていることでした。

■パーミッシブ型オープンソースライセンスが広がり続けている

パーミッシブ型(寛容型)オープンソースライセンスの使用が引き続き増加したことは当然です。
Apache 2.0ライセンスMITライセンスはGPL系に比べて人気が高く、この両者を合わせると現在使用されているオープンソースライセンスの50%を超えます。

パーミッシブ型ライセンスは、他のユーザーがオープンソースコンポーネントをどのように使うかについて最低限の制限しか設けず、オープンソースコードの使用、修正、再配布を自由に行うことを許可します(自由の程度はそれぞれによって異なります)。

パーミッシブ型ライセンスで使用が許可されたオープンソースコンポーネントは、使用者がプロプライエタリな派生物に使用することができ、使用する代わりに要求される条件はほとんどありません。

オープンソースの使用は組織において一般的な手法になりつつあり、オープンソースライブラリが企業のコードベースの大半を占めることから、企業では、使用者に最低限の制限しか課さないパーミッシブ型ライセンスのコンポーネントが明らかに好まれています。パーミッシブ型ライセンスの使用が増え続ける理由はここにあります。

オープンソースの作成者たちに目を向けてみても、パーミッシブ型ライセンスの需要が増えると、パーミッシブ型ライセンスの供給も増えています。

作成者は、できるだけ多くの人たちに届けたいという理由から、オープンソースプロジェクトにパーミッシブ型ライセンスを付与しています。

オープンソースプロジェクトをパーミッシブ型ライセンスでリリースするということは、企業はコミュニティにほとんど貢献することなく、オープンソースを使用したり、それを基に構築したりすることになりますが、今のところ、多くのオープンソース作成者がパーミッシブの道を選択し続けています。

今年のデータによると、オープンソースコンポーネントの76%にパーミッシブ型ライセンスが付与されています。
これは、去年の67%から9%の増加です。
コピーレフト型は、オープンソースライセンスの24%にとどまりますが、去年は33%でした。

■Apache 2.0ライセンスが先頭を走る

Apache 2.0ライセンスによってGPL 3.0ライセンスが2位から3位に下がり業界を騒がせた2017年からはすでに長い時間がたっています。

今年も、Apache 2.0の拡大は続き、26%MITライセンスを抑え、28%1位になりました。

GitHubのchoosealicense.comでの説明によると、Apache 2.0ライセンスでは主な条件として著作権情報とライセンス情報の表示を維持することを求めますが、特許権を明示的に使用許可して、許諾物、修正、大規模な派生物を、異なる条件下ではソースコードなしに配布することを認めています。
Apache 2.0ライセンスは、Kubernetesをはじめとする人気のオープンソースプロジェクトで非常に多く使われています。

こうしたことが人気上昇の一因になっていると思われますが、もう1つの要因は、Apache 2.0の明示的な特許権の使用許可です。
特許は、開発者にとって支障となることが多い問題です。

おそらく、特許権の明示的な使用許可があることが、エンドユーザーがApache 2.0ライセンスを選ぶ理由の1つです。
Apache 2.0は特許の問題を解決する、より安全な選択肢であり、この点が特許権に対応していない、簡単な条文のMITライセンスと異なる部分です。

■MITオープンソースライセンスが消えることはない

今年、MITライセンスは2位に位置し、オープンソースライセンスの26%を占めました。
ライセンスは1位ではなくなりましたが、短くシンプルなライセンスなので、近い将来人気がなくなるとは考えにくいでしょう。

弁護士であり、オープンソース開発者であり、GitHubのシニアプロダクトマネージャーであるBen Balter氏は、開発者がMITライセンスを選ぶ理由を、「条文が短くて、要点が押さえられています。MITライセンスは、再頒布ユーザーに、何ができないのかを伝えています。これには著作権(著作者)情報の表示も含み、黙示的保証の免責(使用者側に責任があること)を明記しています。これは、明らかに開発者向けに最適化されたライセンスです。法律の学位がなくても条文の内容を理解できますし、導入はとてもシンプルです」と説明します。

GitHubのchoosealicense.comでは、MITライセンスについて、「コードは作成者に帰属するということを明記することと、作成者に責任を負わせないことを守る限りコードをどのようにでも使用できる」と説明しています。
数年前、Facebookは、騒動を引き起こしたReactのライセンスをMITライセンスに公に変更しました

このほか、MITでライセンス許可されている人気のオープンソースプロジェクトには、Angular.jsrails.NET Coreなどがあります。

■GNU GPL系ライセンスは人気低下が続く

GPLv33位をキープしましたが、2019年の13%から、2020年は10%に低下しました。
GPLv24位をキープしましたが、この数年は10%程度の市場シェアにとどまっています。

今年、GPL v3.0GPL v2.0LGPLv2.1はいずれもトップ10に入りましたが、トップ10のライセンスの中でこの3つが占める割合は合計で24%です。
これは、GNU GPL系ライセンスの人気がわずかに低下していることを示しています。

GPLはオープンソース革命の初期に先駆的な役割を果たし、コピーレフト型ライセンス(ウイルス性ライセンスとも呼ばれる)の始まりとなりました。
GPLライセンスを許諾されたコンポーネントを組み込んだ場合は、ソースコードを公開し、そのコード全体を修正し配布する権利を認める必要があります。
さらに、ソースコードは同じGPLライセンスのもとでリリースしなければなりません。

今後もGPLユーザーは必ず存在します。巨大なオープンソースコミュニティによって作られたLinuxカーネルはGPLライセンスを使用しています。
しかし、現在のビジネス界において、制限の少ないライセンスの方が好まれていることは明らかです。

■2021年オープンソースライセンス:今後の動き

現実的なビジネスモデルを構築しようとする動きと、強固で優れたオープンソースプロジェクトを維持しようとする動きの間で、緊張は高まり続けています。
今後も、オープンソースプロジェクトは、利益を創出することと、オープンソースコミュニティを支援するメンバーであることのバランスに引き続き苦心することでしょう。

オープンソースコミュニティへの支援は増え続けていますが、小規模ながら重要なプロジェクトの中で作成や保守に無償で懸命に貢献している人々が、より良いビジネスモデルを目指してライセンスを更新することは多くなると予想されます。
または、燃え尽きて、プロジェクトをあきらめることになります。

もちろん、比較的大規模な企業がオープンソースを利用して内容を更新しても「派生著作物を配布できない」と主張することについて、私たちコミュニティで激しい論争になるでしょう。

オープンソースコミュニティは拡大と発展を続け、今後も新しいビジネスモデルが浮かんでは消えていくことでしょう。
オープンソースコミュニティの中央管理的ではないという性質から、世の中の多数意見を覆すような多様なオプションと新しいアイデアが幅広く提供され続けると思われます。

ここで1つ確かなことは、オープンソースは定着しつつあるということです。
そして、ライセンスという観点では、現在のところは制限が少ない方が良いという傾向になっています。


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