2025年11月14日
堀田実希 hotta
ソフトウェア開発の現場では、アジャイル開発が主流になりつつありますが、日本では大規模プロジェクトや要求が明確なプロジェクトにおいては、依然としてウォーターフォール開発が採用されています。また製造業では、ウォーターフォール開発とアジャイル開発の両方のアプローチが必要です。
Jira(ジラ)を使って、プロジェクトの各フェーズを透明化し、リスクを早期に発見・対処する方法、さらには変更要求管理までスムーズに行う秘訣をご紹介します。
ウォーターフォール開発とは、その名の通り、滝のように上流から下流へ、つまり「要件定義」→「設計」→「実装」→「テスト」→「リリース」といった工程を、原則として前の工程が完了してから次の工程に進む線形(リニア)で順番通りの開発手法です。各フェーズで成果物が確定・承認されるため、計画通りに進めばプロジェクト全体の予測が立てやすいというメリットがあります。
ウォーターフォール開発での Jiraの役割は、「プロジェクト全体の進捗と課題の可視化」と「成果物・ドキュメントのトレーサビリティ(追跡可能性)の確保」です。
ウォーターフォール開発とアジャイル開発は、ソフトウェア開発における二大潮流ですが、そのアプローチと目指すゴールには大きな違いがあります。
ウォーターフォール開発は、事前に全体像を確定させ、計画通りに進行することで品質とスケジュールの確実性を高める手法です。しかし、一度決めた要件を途中で変更することが難しく、もし変更が必要になった場合、大きな手戻りやコスト増につながるリスクがあります。
一方、アジャイル開発は、短いサイクルで開発・テスト・改善を繰り返すことで、変化への対応力と顧客満足度を最大化する手法です。全貌が不確実な段階でも開発を始められますが、全体計画のコントロールが難しくなりがちで、大規模なシステム開発にはウォーターフォール型のアプローチが必要となることもあります。
Jiraは、元々アジャイル開発(特に Scrumや Kanban)のサポートツールとして認知されていますが、課題管理機能が柔軟なため、ウォーターフォール開発の「計画遵守」という側面にフォーカスした運用もできます。
Jiraでは、課題(作業)をエピックやバージョンで構造化し、厳密なワークフローで管理することで、ウォーターフォールの計画的な進行を助けます。カスタマイズ設定で層を複数設定し、課題(作業)に親子関係を持たせることができます。
ウォーターフォール開発を Jiraで管理する場合、「プロジェクト(2025年現在、名称を"スペース"に変更中)」と「課題タイプ」の構成が重要になります。
ウォーターフォール開発の特性に合わせて、管理対象を明確にするために課題タイプを設定することが推奨されます。
この構成により、最上位の「要求/エピック」を「要件定義」フェーズで作成・確定させ、それを満たすための具体的な作業を「タスク」として「設計」「実装」フェーズで実行するという、ウォーターフォール型の流れを Jira上で忠実に再現できます。
Jiraをウォーターフォール開発に適用する場合、各フェーズの「インプット」「アウトプット」「承認」を課題とワークフローに落とし込むことが運用成功の鍵となります。ここでは、フェーズごとの具体的なJiraの運用例を紹介します。
このフェーズでは、全ての機能と非機能要件を明確にし、プロジェクトのスコープを確定させます。
確定した要件を基に、システム全体の構造や詳細な仕様を定義します。
設計書に基づきプログラミングを行い、機能が要件を満たしているかを検証します。
本番環境へのシステムリリースと、その後の運用・保守の準備を行います。
ウォーターフォール開発における Jiraの成功は、フェーズの厳密な移行を強制するワークフローの設計にかかっています。
ウォーターフォール開発では、各主要フェーズ(要件定義、設計、実装、テストなど)が Jiraの課題ステータスと密接に結びつきます。
ウォーターフォール開発において、開発途中の要件変更は原則として避けるべきとされていますが、現実には顧客の要望や外部環境の変化により、変更要求(Change Request: CR)は発生します。この変更要求管理(Change Management)への対応こそが、ウォーターフォールプロジェクトの成功を左右する重要なポイントであり、しばしば見落とされがちです。
Jiraを活用することで、変更要求をブラックボックス化せず、正式なプロセスに乗せて管理できます。
このプロセスを経ることで、「変更要求は原則受け付けない」という建前と「変更を柔軟に管理する必要性」という実情との間でバランスを取り、曖昧なままの変更を防ぎ、PMがコストやスケジュールの観点から明確に Yes/Noの決断を下せるようにします。
Jiraのダッシュボードを活用することで、進捗、滞留、リスクをリアルタイムで可視化し、適切な対策を打つことができます。以下のような切り口で見える化ができます。
ウォーターフォール開発では、ドキュメント(要件定義書、設計書、テスト計画書など)や成果物が、次のフェーズに進むための重要なインプットとなります。Jiraから参照できないと、タスクと成果物の対応関係が不明瞭になり、トレーサビリティが失われます。そこで、Confluence(コンフルエンス)との連携をおすすめします。
Confluenceで作成したドキュメントは、Jira課題のリンク機能を用いて関連付けます。Confluenceに Jira課題(作業)の URLを貼り付けると Jira側で記載のある Confluenceページを抽出して表示してくれます。Confluence側のドキュメントのタイトルや保存場所が変更されてもリアルタイムに引き継いでくれるため非常に便利です。
ウォーターフォール開発における最大の課題は、進捗の遅延が発見されにくく、発見時には手遅れになっていることです。Jiraを効果的に活用し、進捗の遅延を確認・対策するためのポイントは、「早期の予兆検知」「即座の対策」です。
ウォーターフォール開発における UAT(ユーザー受け入れテスト)フェーズは、システムが要件を満たしているか、ユーザーが実際に使えるかを最終確認する重要な関門です。ここで発見されたバグは、リリース直前であるため、迅速かつ優先順位を明確にした対応が求められます。Jiraを活用し、混乱しがちな UATバグを適切に管理する方法を紹介します。
UATフェーズで発見されたバグは、その後の保守フェーズで見つかるバグと区別して管理する必要があります。

UATバグ全てをすぐに修正するリソースと時間はないため、優先度付けが最も重要です。
優先度の定義: バグチケットの「優先度 (Priority)」フィールドを明確に定義します。
「影響度」カスタムフィールド: 「リリースに与える影響度(大/中/小)」といったカスタムフィールドを追加し、機能的な重大さに加え、プロジェクト全体への影響(例:スケジュールへの影響)も記録します。この客観的な情報が、PMの迅速かつ正確な決断を支えます。
UATバグの優先度付けは、PM、開発リーダー、テスター、そして顧客(ユーザー)も交えて行う必要があります。
UATバグの迅速な修正と再テスト状況を可視化し、バグが残っていることによるリスクを管理します。
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ウォーターフォール開発は、その特性上、初期の計画と厳密な管理が不可欠です。本記事では、プロジェクト管理ツール Jiraをウォーターフォール開発の各フェーズに適用することで、「進捗の透明化」「厳格なフェーズ移行の徹底」「変更要求の統制」を実現する方法を解説しました。 伝統的なウォーターフォール開発も、Jiraという強力なツールを活用することで、最新の知見と管理手法を取り入れ、より確実で成功率の高いものへと進化させることが可能です。本ガイドを参考に、ぜひ貴社のウォーターフォールプロジェクトで Jiraの活用を進めてください。
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