2025年11月13日
堀田実希 hotta
Jiraでタスク履歴を管理する際、工数管理も一元化することで、プロジェクトの効率と透明性が大幅に向上します。
開発チームは、タスクに着手する前に必要な時間の見積もり(予定)を記録し、完了後には実際にかかった実績時間をそのまま入力できます。Jira上ですべて完結するので、別の予実管理ツールへの二重入力の手間が解消されます。
プロジェクトの進行中はリアルタイムな進捗の可視化が可能となり、プロジェクト終了後には予定と実績の乖離を正確に分析できます。
この「予実の比較」と、それに基づく次へのフィードバックこそが、工数管理を行う上で最も重要です。 このデータの蓄積が、将来の見積もり精度向上とプロジェクトの健全性の早期把握に不可欠な基盤が築かれます。
Jiraプロジェクトで工数管理を開始するための初期設定について解説します。本記事では Jiraの Standardプラン以上のライセンスを所有している方を想定しております。業務利用の Jiraにはスペース作成権限がないという方は、ユーザー数10人以下であれば無料で利用できるフリープランがありますので、個人用にアカウントを取得して操作感を試してもよいでしょう。
工数管理はプロジェクト単位で行うため、プロジェクトの課題をまとめる"スペース"(旧名称"プロジェクト"。2025年後半に名称変更中)を作成する必要があります。しかし、どのユーザーもJiraのサイト(プロジェクト)作成権限を付与されているとは限りません。
Jira Cloudは、プロジェクト(スペース)作成権限を付与されているアカウントのみがスペースを作成できます。プロジェクト(スペース)作成権限を持つユーザーは、左カラムの「プロジェクト」横の「・・・」マークをクリックし、「プロジェクト(スペース)を作成」という表示があり、作成ができます。(2025年現在)
クラウド環境の Jiraでサイトを作る際、テンプレートが選択できます。「ソフトウェア管理」「マーケティング」「個人用」などさまざまな用途がある驚かれる方もいると思います。いまやJiraはソフトウェア開発のプロジェクト管理だけのためのツールではないのです。
ソフトウェア開発をする場合、「カンバン」「スクラム」「バグ追跡」のテンプレートを使うのが王道です。または「作業管理」の「空白スペース」「タスクの追跡」テンプレートも便利でしょう。

今回は「スクラム」テンプレートを使います。「スクラム」を選択し、「テンプレートを使用」をクリックすると、スペースタイプ「チーム管理対象スペース」「企業管理対象スペース」を選択するよう促されます。どちらを設定するかは組織の規模や設計よって異なりますが、今回はより汎用的なケースを想定してチーム管理対象スペースで設定します。
このプロジェクト内に、工数管理の対象となるすべての作業(旧名称・課題、通称チケット。2025年後半にかけて、UI上の名称がIssue 課題 から作業 Work に変更中)が格納されます。
工数管理を行うには、各課題に時間管理をするためのフィールドがチケット画面上に表示されている必要があります。各スペース(プロジェクト)の左カラムからスペース設定をクリックし、フィールドの設定を行います。対象の課題(または作業)タイプ(例:ストーリー、タスク)すべてのコンテキストフィールドに、「時間管理」(英語表記では「Time Tracking」)フィールドと、初期見積もり(英語表記ではOriginal Estimate)を追加し、表示されるよう設定します。

工数管理の第一歩は、タスクに着手する前に見積もり(予定時間の設定)です。
Jiraの課題(作業)チケット作成時に、「初期見積もり」を入力します。入力形式は「3w 2d 5h 30m」(週、日、時間、分)という単位で入力できます。

この予定時間の入力が、その後の実績との比較分析の基礎となります。
作業を進めるごとに、かかった時間を「消費時間」に記録し、必要に応じて「残り時間」を記録します。いずれも入力形式は「3w 2d 5h 30m」(週、日、時間、分)でできます。
「残り時間」は、その時の作業者の体感の残り時間を入力します。

工数管理の最終目的は、予定と実績の比較から「学び」を得ることです。
Jiraでは、課題画面やリストビューで、以下の3つの値を同時に確認できます。
「リスト」ビューの列に「残余見積」「進捗状況」「初期見積」「消費時間」を追加すると一覧化できます。

子課題だけ見たい場合、親課題の関連課題ビューで一元確認することができます。
実績時間 > 元の推定値 となっている課題は、見積もりが甘かった、あるいは途中で仕様変更や予期せぬ問題が発生したことを示唆します。この乖離を分析し、原因を振り返ることで、次のスプリントやプロジェクトの見積もり精度向上につなげます。

上の画面では「親課題2の子課題2」の見積もりが非常に甘かったことがわかりますね。初期見積もりでは3日でしたが、2日時間作業した結果、「あと4日、作業時間が必要だ」と新たに見積もりがされ、その見積もりが正しい場合現在は全体の39%しかすすんでいないということが可視化されています。
これらのビューで予定時間を確認することで、計画全体に対してリソースが適切に割り当てられているか、特定の期間に見積もり工数が集中しすぎていないかなどを把握し、必要に応じてタスクの分割や優先順位の見直しを行うための材料とします。
Jiraの高度な課題検索(JQL: Jira Query Language)は、工数管理の分析において非常に強力なツールです。
例えば、「予定時間(Original Estimate)が設定されていない課題」や「実績時間(Time Spent)が予定時間を20%超過している課題」など、特定の条件を満たす課題群を抽出できます。
originalEstimate is not EMPTY AND timespent is EMPTY: 予定時間が未入力の課題
remainingEstimate = 0 AND status != Done : 残り工数がゼロなのに完了していない課題
これらのJQLは、AI機能がアクティブ化されているJira環境ではAIに生成させることが可能です。
JQLで抽出した結果は、グラフ化したりエクスポートしたりすることで、工数管理上の問題点を深く分析するための貴重なデータとなります。
Jiraによる工数管理を定着させ、最大限の効果を引き出すためのプラクティスをいくつかご紹介します。
入力ルールの統一:
実績時間の入力頻度(毎日、タスク完了時など)と入力単位(例: 最小15分単位)をチームで統一し、徹底します。
入力時間の設定:
毎夕15分、チケットの更新だけを行う時間を設定する。
振り返りへの活用:
スプリントレビューやレトロスペクティブ(振り返り)の際に、予定と実績の乖離が大きかった課題を必ず取り上げ、その原因を分析し、次の見積もりに活かす習慣をつけます。
「残り工数」の意識:
実績を入力する際に必ず「残りの推定時間」を見直すルールを徹底し、遅延を早期に検知し、ロードマップの最新状況を正確に保ちます。
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特に「工数の正確な集計・分析」「管理部門や経営層への報告」「複数プロジェクト・複数ユーザーの横断的な管理」を重視する場合は Tempo Timesheetsをご検討ください。
Jiraによる工数管理は、見積もり精度、プロジェクトの透明性、そして最終的なビジネスの投資対効果を向上させるための基盤です。 「時間管理フィールドの有効化」「予定・実績の確実な入力」「JQLを用いた分析」を実際にやってみて、「Jiraでここまでできるんだ!」と試してみていただければと思います。
特に、予定と実績の乖離を単なる記録で終わらせず、その原因を分析し、次なる計画にフィードバックするプロセスが、組織の成熟度を高めます。今日から Jiraでの正確な工数管理を実践し、データに基づいたより予測可能で効率的な開発体制を構築しましょう。
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