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リックソフトブログ

Claude Cowork × Boxでナレッジを共有!AIを「個人の効率化ツール」から「部署の判断パートナー」へ

2026年08月05日

AI・DX室

AI・DX室 dx

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AIに仕事を頼むたびに、同じ前提条件を毎回AIに説明し直していませんか?

生成AIのツールを全社に配っても、AIでの業務改善活用が個人レベルで止まってしまうケースは少なくありません。

今回は、リックソフトの AI・DX室が Claude Cowork を実務で使う中で作った「二層メモリ」の構成と、その情報を毎週自動で最新に更新する運用をご紹介します。

Claude Coworkとは?

Claude Cowork は、Anthropic の生成AI「Claude」をデスクトップアプリ上で使う機能です。

チャットのようにファイルを貼り付けるのではなく、許可したフォルダのファイルを直接読み書きします。

決めた時刻に処理を自動実行するスケジューラーや、Slack・Confluence・Jiraへの接続にも対応しています。

今回紹介する運用は、この「PCのローカル上のファイルを読み書きする」という性質の上に成り立っています。

1. 生成AI活用が「個人」で止まる2つの原因

AI・DX室で Coworkを実務に使い始めて、2つの課題が見えてきました。

  • 説明が個人に閉じる: Coworkに説明した内容は本人のアカウントにしかメモリとして残らず、チームの資産になりません。
  • ナレッジの属人化: AIツールにも記憶機能はありますが、チームでナレッジを増やして管理することはできません。

個人で使っている間は、Coworkの出した記憶が対個人にとどまり、なぜその情報を出したかという前後の文脈が組織に共有されないことが問題でした。

2. 構築した「二層メモリ」の仕組み

新しいツールは作りません。すでにある情報を、AIが読めるファイルとして1か所に置き、更新を自動化します。

チーム共有メモリの構造と週次の自動更新

図の①②③は、それぞれ週1回動く自動処理です。

  • ① 部署共通メモリの更新: 直近1週間の一次情報を読み、確定した事実だけを共通メモリへ反映します。実行するのは担当者1人です。
  • ② 個人メモリの更新: 同じ一次情報から、担当案件の経緯・タスク・目標の進捗を各自のメモリへ反映します。
  • ③ 週次活動サマリの投稿: チームのチャンネルへ「ネクストアクション」と「共通メモリの変更点」を投稿します。参照するのは一次情報と共通メモリの変更履歴で、個人メモリは参照しません。

やったことは3つです。

  • メモリをファイルにして、クラウドストレージの同期フォルダに置く。 Claude Cowork は許可されたローカルフォルダのファイルを直接読み書きします。クラウドストレージ(当社は Boxを利用)の同期フォルダに置けば、ローカルファイルのまま複数人で共有できます。連携の作り込みは必要ありません。
  • 部署共通メモリと個人メモリの二層に分ける。 会社・共通用語・部署の判断基準は共通側に置き、担当案件の経緯やタスクは個人側に置きます。
  • 更新を週1回自動化する。 チャットと社内wikiから、確定した事実だけを毎週取り込みます。共通メモリが更新された場合は、③の週次サマリで Slackに変更点が記載されます。

共有メモリと個人メモリの中身

現在の規模は、共通メモリが10ファイル、個人メモリが30~50ファイル程度です。個人メモリは運用するほど増えていきます。

最初は個人PCのローカルにメモリを置いて活用していましたが、PCが壊れれば消えますし、共有もできません。同期フォルダへ移したのは、この2点を解決するためです。

3. 設計の勘どころは「更新責任」と「権限設計」

「共通」と「個人」に分けたのは、更新責任を1人に寄せるため

会社・組織・共通用語・判断基準は共有側で管理し、二重管理を防ぎます。また、共有フォルダは主担当が責任を持って更新することで、管理責任を明確にしています

部署をまたぐと情報の粒度も更新頻度も合わず、保守コストと事故のリスクが増えると考え、この取り組みを始めるにあたり部署と個人の二層が実用的な上限だと判断しました。

AIが共有フォルダに書き込むリスクは、2つに分けて考える

共有フォルダに AIが書き込むことへの懸念は必ず出ます。ここは2つに分けて考えました。

  • 1つ目はアクセス権限です。これは AIだけの話ではありません。部署フォルダと個人フォルダに権限が切られていれば、他部署のファイルは読めませんし編集できません。
  • 2つ目は誤操作の規模です。人の誤操作は人の手の速さで止まりますが、AIは短時間で大量のファイルに及びます。共通メモリへの書き込みを1人に絞ったのはこのためです。

4. 共通メモリの中身は「事実」より「判断基準」

共通メモリでは判断基準を管理しています。判断基準がチームで揃うと、返ってくる提案の質が変わります。

実際に共通メモリに置いている「AI・DX室の原則とスタンス」から一部を抜粋します。

1. 部署の本質
AI・DX室の本質はトランスフォーメーション。デジタル化や AI活用は手段であって目的ではない。手段は最後に決める。
価値が出ることが目的。AIや ITツールを使うこと自体を目的にしない。ゴールをクリアできるなら、AIを使わなくてよい。

2. 考える順番(機能・運用を作る前に)
1. その運用・機能は本当に必要かを疑う。業務そのものの必要性を先に検証する。
2. 必要なら、既存の運用をよりシンプルにできないか/無駄な運用をなくせないかを考える。
3. それでも残る運用・機能について、初めて手段(AI・自動化・ツール)を考える。

5.「やめる判断」は「始める判断」と同じくらい重要
何かを始める時は、同時に「今やっていることの中で何をやめるか」を必ず検討する。
始めるのは動機があれば決まるが、やめるのはサンクコスト・不安・配慮で先延ばしされがち。意識的にやらないと絶対に進まない。
Cowork との会話でも、新しいことを始めようとしたら「代わりに何をやめられそう?」と問い返させる。

11. 費用対効果は「限界コスト」で見る
判断は絶対コストではなく、運用完成度を1点上げるのにいくらかかるかで行う。完成度10点を50点にするのに20のコストなら優先度は高い。70点を80点にするのに100かかるなら優先度は低い。
同じコストなら、完成度の低い領域に投じたほうが全体の総和は大きい。

5.「忘れない同僚」から「判断のパートナー」へ|4つの活用例

「フローを見直したい」の一言から始まる壁打ち

私たちは Claude Coworkを単純作業の代行ではなく、判断そのものの相談に使っています。

稟議フローの見直しを相談したときは、課題のロジックツリーと3つの案が返ってきました。

Claude Coworkが「担当者・件数・企業の属性・関連する社内ルール」をメモリが持っているため、「フローを見直したい」の一言で相談を始められます。壁打ちの質は入力の情報量で決まります。

「なんとなくの振り返り」が、実績ベースの進捗管理に変わる

チャンネルの実績から目標の評価尺度を再計算し、進捗ログを自動で追記しています。「なんとなくの振り返り」が、実際の成果ベースの振り返りに変わりました。

「書き溜めよう」では貯まらないナレッジが貯まる

年1回しか触らない作業の手順や、知らないと設計を誤る前提知識をメモリに残しています。「ナレッジを書き溜めよう」と号令をかけても貯まりませんが、会話ログから抽出する形にすると貯まります。

月曜の朝、先週の文脈が復元されている

金曜の夕方に「やりかけなので TODOを整理して、月曜朝にリマインドして」と頼んでおくと、月曜には先週の文脈と具体的な宿題、関連するリンクがまとめて届きます。「先週なにやったんだっけな...」と思い出す作業がなくなりました。

6. 現在地と残っている課題

AI・DX室で Cowork運用を始めて3ヶ月、チームでの共有を始めて1ヶ月です。まだ AI・DX室内での検証段階で、全社での効果を数字で示せる段階ではありません。現時点でわかってきたことは2つです。

  • 溜まっていくルールと知識と実績から、自分に最適化された判断パートナーが育つ
  • 探す・思い出す・転記する作業が減り、意思決定に時間を割ける

一方で、残っている課題もあります。

  • 個人の目標管理と、プロジェクトの進捗の紐付けができていない。
    わたしたち AI・DX室は、社内業務AI化を実現するMBOを各自が持っており、複数のプロジェクトを同時に進めています。
    プロジェクトが進み、効率化された結果、それが目標のどの評価尺度に到達したかは AIでは判断できず、人間が判断しています。
    将来的には、完全に AIが判断できるように設計していきます。
  • AI・DX室での検証段階にとどまっている。
    他部署では情報の種類も判断基準も違うため、同じ形がそのまま機能するかは確かめられていません。

7. 次は「各チームが自分たちのメモリを持つ」状態へ

今後は初期セットアップと週次更新の手順をパッケージ化し、他の部署へ展開して各チームが自分たちのメモリを持つ状態を目指します。

部署ごとに扱う情報も判断基準も違うため、共通メモリは部署単位で持つのが現実的だと判断しました。全社で1枚を作る形は取りません。

おわりに

生成AIの活用が個人で止まっているなら、見直す対象は AIの使い方ではなくナレッジの置き場所です。特別な開発は要りません!始めるために必要なのは、共有フォルダと「何をどこに書くか」の取り決めだけです。まずは自分の部署の前提と判断基準を1ファイルに書き出すところから、チームでの AI活用へ踏み出してみませんか?

本ブログが、皆様の組織内AIの設計見直しにお役立ていただければ幸いです。

本ブログのカテゴリ: AI活⽤・業務改善事例
                          

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