AIの「管制塔」だけでは足りない――Workatoが示したAIコントロールプレーンの考え方~WoW Las Vegas 2026 参加レポPart1
2026年10月30日
リックソフト株式会社 ソリューション営業部 オペレーショナルエクセレンス課
カワセミ kawasemi
はじめに
2026年9月、リックソフトのメンバーとして Workatoの年次カンファレンス「World of Workato Las Vegas 2026(WoW Las Vegas 2026)」に参加してきました。企業の AI活用と業務変革をテーマにしたグローバル年次カンファレンスで、100人以上が登壇し最新情報が共有されました。
このイベント2日間で、最も耳にした言葉は「コントロールプレーン」でした。
期間中には、Workatoから「Enterprise AI Control Plane」(以下、AIコントロールプレーン)の発表もありました。
そこで本記事ではこのテーマに絞り、2日間の様子を絵日記形式で振り返ってみたいと思います。
なお、本記事はセッションの内容を筆者の理解でまとめたものです。
詳細は、以下の Workato社の公式記事もあわせてご確認ください。
▷Workato Japan公式レポ▷ World of Workato Las Vegas 2026参加レポート: Workatoの実現するAI統制基盤の姿(Workato Japan note)
WoW Las Vegas 2026 1日目

会場に入ってまず驚いたのは、その広さです。全体が青くライトアップされていて、開始を待つ間からわくわくしていました。
コントロールプレーンってなに?基調講演で語られたAIと「管制塔」の話

朝の基調講演でイベントの幕が開けました。
登壇した Workato社Chief of AIのBhaskar Royさんが取り上げたのは、多くの企業で AIの取り組みが「管理しきれない状態」になっている、という課題です。
ある Fortune100企業では、社内で47もの AIエージェント導入プロジェクトが走っている中で、「ROI」「スケールの方法」について答えられない状態だといいます。
その原因として示されたのが、コントロールプレーンの乱立です。
この状況を説明するために、Bhaskarさんは、WoW Las Vegas 2026に世界各地から参加者が集まっていることに触れ、多くの人がラスベガスに来るまでに利用した空港を例えに話を始めました。
- 管制塔(コントロールプレーン)=飛行機をどう飛ばすか、ルールを決める場所
- 空港全体(実行プレーン)=チェックインや保安検査など、実際の手続きが進む場所
管制塔だけでは空港は回らず、管制塔がなければ空港は止まってしまいます。
Bhaskarさんによると、AIを管理する仕組み(管制塔)を提供する製品は多いものの、実際に処理を動かす基盤(空港)とは別々になっていることが多いそうです。これに対し Workatoは、「空港と管制塔を一体で提供する」というメッセージを打ち出していました。
もう一つ強調されていたのが、コントロールプレーンの中立性です。社内には複数のクラウドや SaaS、AIモデルが混在しています。「特定の提供元に偏った管制塔では、複数のエージェントや MCPをまとめて管理できない」という考えが示されていました。
管制塔(AIコントロールプレーン)の中身が発表された

基調講演の後半は、Chief Product OfficerのBhagat Nainaniさんが登壇しました。
Nainaniさんはまず、昨年は多くの企業が AIを試し始めた段階だったのに対し、今年は実際の業務で使う段階に移っていると振り返りました。そのうえで、企業の CIOが共通して持つ課題として「スピード」「リスク管理」「コスト管理」「本格導入」の4つを挙げました。
このうち、今回のテーマであるコントロールプレーンに関わるのは「リスク管理」と「コスト管理」です。
まずはリスク管理です。Nainaniさんは「人は一度ミスをするだけだが、エージェントは同じミスを1万回繰り返す」という言葉を紹介し、そうしたミスを仕組みで止める必要があると話していました。
その仕組みとして発表されたのが、Workatoの AIコントロールプレーンです。
コストとセキュリティのセッション
午後は、コストとセキュリティに関するブレイクアウトセッションを2つ聴講しました。
1つめは、トークンコストを抑えるためのセッションです。
「AIのコストは価格ではなく、アーキテクチャの問題だ」という考え方のもと、次の5つの方法が紹介されました。
- モデル選択:要約や分類などの処理には、低コストのモデルを使う
- ルーティング:依頼の内容に応じて、適切なモデルに振り分ける
- キャッシュ:同じ内容を繰り返し送らない
- 可視化とコントロール:部門別・ユーザー別に使用量を把握し、上限を設ける
- コンテキスト最適化:送る必要のないトークンは送らない
Workatoの社内では、このアプローチで AIコストを79%削減したそうです。
2つめは、エージェントのセキュリティに関するセッションです。
デモを交えながら、プロンプト攻撃を防ぐガードレール、個人情報(PII)を検出してマスキングする機能、ユーザー本人の権限でエージェントを動かす仕組みなどが紹介されました。
こうしたルールを適用していくのが、 AIコントロールプレーンの役割です。
セッションの最後には、本番運用を始める前は「想定外の事態でも信頼できるか」、運用中は「監視し、すぐに対処できるか」が問われ、その両方をプラットフォームの仕組みとして備えておくことが大切だ、とまとめられていました。
WoW Las Vegas 2026 2日目
乱立するコントロールプレーンをどう束ねるか

2日目は、コントロールプレーンというテーマの核心ともいえるセッションに参加しました。
1日目の基調講演でも取り上げられた「乱立」という課題について、さらに一歩踏み込んで深掘りする内容でした。
登壇者によると、企業内にはすでに APIゲートウェイ、データカタログ、モデルゲートウェイ、エージェント基盤、ID基盤といった、数多くの「コントロールプレーン」が存在しているそうです。
しかし、それらが個別に管理されているため、全体を横断的に統合・制御できていないのが現状とのことでした。
その結果、次の4つが分断されてしまうといいます。
- ID:共有のサービスアカウントを経由すると、誰の依頼だったのかがわからなくなる
- ポリシー:システムやツールごとに、個別のルールが適用される
- コスト:各基盤が個別に算出・報告するため、全体のコスト感が把握できない
- インベントリ:「社内にエージェントが全部でいくつあるのか」という問いに答えられない
そこで示されたのが、コントロールプレーンに求められる3つの条件です。
- 全体を通して見えるか(横断性)
AIの処理は、モデル、ツール、業務システムなど複数の層を跨いで動きます。モデルゲートウェイは使ったトークン数を、APIゲートウェイは呼び出されたことを把握できますが、「誰のために、何の目的で」までは見えません。最初から最後までを追えることが求められます。 - 特定のベンダーに偏らないか(中立性)
特定のプラットフォームに縛られず、あらゆるモデルやツールを公平に扱える中立性が不可欠です。1日目の基調講演でも強調されていました。 - その場で止められるか(強制力)
ログを見て後から問題に気づくだけでなく、処理の通り道で即座に止められることが求められます。
具体的には、個人情報を含むリクエストがAIに届く前にブロックしたり、特定の重要な処理に対して人間の承認ステップを挟んだりするイメージです。
これら3つの条件を満たす仕組みとして、Workatoが提示したのが「AI Gateway」と「AI Registry」の組み合わせです。
エージェント、モデル、MCP、APIという4つの出入り口を共通の ID・ポリシー・コスト管理によって束ね、すべての AI資産を AI Registryに一元登録・管理するアーキテクチャとなっています。
WoW Las Vegas 2日間の振り返り
1つのリクエストの流れ
これまでのセッションから、AIコントロールプレーンは「AI Gateway」と「AI Registry」の2つを軸に、コスト管理とガバナンスを統合した仕組みだという理解が深まりました。
社員がどの AIを利用する場合でも、リクエストは必ず共通の AI Gatewayを経由します。そこで利用者のアクセス権限や各種ルールがチェックされ、通過したすべての処理がログとして記録される仕組みです。
AIコントロールプレーンの画面でできること
2日目のセッションでは、実際の画面とともに次のような機能が紹介されました。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| レジストリの一覧 | 社内の AI資産(エージェントやMCPなど)を一覧で確認できる。資産ごとに、誰が公開したか、どのワークスペースにあるか、開発用・本番用のどちらの環境にあるか、社外からも使える状態かがわかる。 |
| ワークスペースの統合管理 | 複数のワークスペースを1つのコントロールプレーンにつなぎ、まとめて管理できる。1日目の基調講演で語られていた「管制塔」と「空港」が、製品ではコントロールプレーンと各ワークスペースという形で分かれている。 |
| トークンの内訳 | AIへの入力(プロンプト)、出力(レスポンス)、キャッシュの再利用量を把握できる。 |
| ツール単位の権限 | 同一のシステム(例:CRMなど)に接続する MCPであっても、ツール(機能)ごとに使える人を分けられる。「営業担当者はデータ更新まで許可し、エンジニアは閲覧のみに制限する」といった柔軟な運用が実現できる。 |
| モデルのルート設定 | どのリクエストをどの AIモデルへ割り当てるかを、レシピで条件分岐を設定できる。自動振り分け機能を有効にすれば、シンプルなタスクはより低コストなモデルへ自動でルーティングされる。 |
| ユーザー画面 | 自分が使えるエージェントやツールだけが表示される。使いたいのに権限がないものは、画面からアクセスを申請できる。 |
まとめ
2日間を通じて分かったのは、AIコントロールプレーンとは、社内の AIの「通り道」を1か所に集め、誰が、何に、どこまで使えるかを、まとめて管理・制御する仕組みだということです。
社内で AIの活用が進めば進むほど、全体を見渡し、適切に束ねる「管制塔」の重みが増していく。そのことを実感しました。
(ちなみに帰路の空港にて、預け荷物のベルトコンベアが故障して荷物が流れない事態に遭遇しました。「管制塔だけでなく、空港が機能して初めて全体が成立する」というメッセージを、旅の終わりに実体験するとは思いませんでした)
ただ、管制塔と空港が整っても、実際に飛び立つ「飛行機(AIエージェント)」がなければ意味がありません。
では、その飛行機は一体誰が、どのように作るのか。その答えとして発表されたのが、「新しいWorkatoの顔」と紹介された「AIRO」です。
次回は、このAIROを中心に振り返ります。
お知らせ
2026年11月18日(水)・19日(木)には、東京マリオットホテル(品川)で「World of Workato Tokyo 2026」が開催されます。
今回ご紹介した Las Vegasでの発表内容を日本で直接聞ける機会ですので、気になった方はぜひ参加を検討してみてください。(お申し込みはこちら)
リックソフト株式会社 ソリューション営業部 オペレーショナルエクセレンス課
カワセミ kawasemi
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