Jira Service Managementの Cloud移行は AI活用を見据えた運用基盤構築のチャンス!ベトナム大手保険企業の JSM移行事例
2026年09月30日
リックソフト株式会社 海外事業部 General Manager
甲斐 博 Hiroshi Kai
この記事は以下のような方におすすめです
- 金融・保険業界で IT運用・システム企画を統括されている方(CIO / IT部門責任者)
- Jira Service Managementのオンプレミス/Data Centerから Cloudへの移行をご検討中の方
- Excelによる IT資産管理や属人化した変更・申請プロセスに課題をお持ちの方
- ITSM運用における生成AI・自動化の具体的な活用イメージを掴みたい方
本記事は、リックソフトのベトナムにある提携企業、BiPlus社が行った移行事例です。BiPlus社はAtlassian Platinum Solution Partnerです。
大手金融・銀行エコシステムの一角を担うベトナムの大手生命保険会社はこのほど、BiPlus社の支援を受け、ITサービス管理システムを従来の共有型 Jira Service Management Data Centerインスタンスから、独立した Jira Service Management(JSM)Premium Cloud環境へと移行し、システムを刷新しました。
本プロジェクトの目的は、単なるテクノロジープラットフォームの移行ではありません。モダンITSM基準に沿った IT運用モデル全体の刷新、データの標準化、そして将来的な AI活用を見据えた運用基盤の構築にありました。
【課題】運用上の自律性を欠いた大規模システム
プロジェクト立ち上げ前、ITチームは社内共有の Jira Service Management (Data Center版環境)を利用して IT運用を行っていました。この体制は、運用上のさまざまなボトルネックを引き起こしていました。
<ボトルネック例>
- カスタマイズ権限がない:他部門のシステムを間借りしている状態で、他部門への影響があるため保険業界特有の業務要件に合わせた柔軟な機能カスタマイズができない状態でした。
- 基盤がレガシー :高度な自動化、AI機能など、Cloud版の Jira Service Managementに搭載されている機能を活用できないままでした。
- サービスリクエストの非標準化:サービスカタログ、申請フォーム、担当者(オーナー)、SLA(サービス水準合意)が十分に標準化されていませんでした。
- 変更管理の形骸化・手作業依存:変更管理プロセスにおいて多段階の承認が必要であったものの、承認フローや影響度確認は手作業で行っており、時として個人の経験に大きく依存していました。
- IT資産管理の限界:約40の基幹アプリケーションシステムと400台の IT機器が Excelで管理されており、インシデントチケットとの連携や正確な影響分析が不可能な状態でした。
【解決策】Jira Service Management の Cloud移行とともに、ITSMのリデザイン
ベトナムの Atlassian Platinum Solution Partnerである BiPlus社は、AI、高度な自動化、柔軟な拡張性を備えた JSM Premium Cloudの機能を最大限に活用し、保険業界の顧客企業が抱える各課題に対するプロセスコンサルティングおよびソリューション設計を提供しました。
1. 集約型サービスポータルの構築
メールやチャットなどの分散したチャネルに頼る運用を廃止。従業員がリクエストの送信、インシデントの報告、解決状況の追跡をワンストップで行える統合社内サービスポータルを構築しました。
マルチポータル構成を採用したことで、将来的に複数部門や拠点へシームレスに拡張可能なアーキテクチャとなっています。
2. 変更管理(Change Management)のデジタル化
変更管理の実施をする際、「リスク × 影響度」マトリクスを用いて変更プロセスを設計し、変更内容を重要度に応じて複数レベルに分類した上で、承認ワークフローを自動化しました。 重大な変更(Major Change)のみを CAB(変更審議会)の審議対象とし、承認履歴をすべて自動記録することで内部統制および外部監査への対応もできています。
3. AI & 自動化を活用したインシデント管理
インシデント管理ワークフローを5つのステージに整理し、JSM Cloudの AI機能を組み込みました。 ナレッジベースの検索支援、インシデント内容の明確化、担当者(エージェント)による解決の迅速化を支援します。 特に、インシデント後レビュー(PIR: Post-Incident Review)プロセスの自動化により、コンプライアンスレポート作成にかかる作業工数を大幅に削減しました。
4. IT資産管理(ITAM):Excel管理から CMDB(構成管理データベース)へ
ITAMシステムを再構築し、IT資産、サービス、担当者データを網羅するデータスキーマを定義しました。資産情報がユーザーおよびチケットと直接紐づくことで、エージェント(ITチーム担当者)は該当機器のスペック、割り当てユーザー、修理・保証履歴、関連ソフトウェアの依存関係をすぐに把握できるようになりました。
【成果】移行所要日数は8週間。実現した ITSM環境が出した成果
プロジェクト開始から本番運用(Go-live)までかかった期間はわずか8週間。 同社は自社の運用ニーズに合わせて自由にカスタマイズ可能な、独立した JSM Premium Cloudプラットフォームが利用可能になりました。
| 評価項目 | 成果・定量的指標 |
|---|---|
| 運用依存度 | 共有インフラ運用プロセスへの依存度を 100%削減(自律的な運用の確立) |
| 承認リードタイム | 部門間の変更承認リードタイムを 40%削減 |
| IT資産の管理化 | 対象範囲内の IT資産を 100%特定 し、チケットへの紐付けを完了 |
| レポート作成時間 | PIR(インシデント後レビュー)レポート作成時間を 70%削減 |
| AI導入準備 | JSM Premium Cloud上で活用可能な 100以上の AIユースケース を整備 |
| データ標準化 | 運用データを標準化し、次フェーズでの本格的なAI活用に向けた強固な基盤を確立 |
モダンITSMから「AI 対応」な運用基盤へ

モダンITSMの導入は、同社における ITサービス提供のあり方に根本的な変革をもたらしました。
- 従業員体験(EX)の向上 : IT部門は定型作業から解放され、一般従業員は直感的なポータルから迅速なサポートを受けられるようになりました。
- 顧客体験(CX)の向上 : 信頼性の高いIT運用基盤により、エンドユーザー向け保険サービスの高い可用性とビジネス継続性が担保されています。
- AI導入に向けたデータ準備 : 日常の運用データが標準化されたことで、次フェーズにおける生成AIの本格導入に不可欠な前提条件が整いました。
本プロジェクトは、同社が今後「モダン・デジタルサービスマネジメント」へと進化し、IT運用全体で AI統合を深めていくための強固な足がかりとなっています。
詳細な設計手法やロードマップをご覧になりたい方へ
リックソフトは、グローバル拠点で Atlassian製品を導入している企業に向けたサポート体制を構築しております。
サービスポータル、変更管理、インシデント管理、CMDBの具体的な設計手法について詳しく知りたい方は、ぜひリックソフトまでお問い合わせください。お問い合わせフォーム「その他」を選択し、「海外事業部によろず相談」とご記入ください。
リックソフト株式会社 海外事業部 General Manager
甲斐 博 Hiroshi Kai
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