2024.01.12更新日:2025.09.26
IT分野におけるアセット管理とは、企業や組織が保有するPCやソフトウェア、ライセンスなどの「IT資産」を管理する取り組みです。
この記事では、IT分野におけるアセット管理の目的や管理方法、管理ツールについて解説します。自社でのアセット管理を見直したい方や、基本的なアセット管理の考え方を知りたい方はぜひ参考にしてください。
IT資産管理はITAM(IT Asset Management:ITアセットマネジメント)とも言われており、企業や組織が保有するIT資産の数や利用状況を可視化し、管理するための体系的な取り組みです。「アセット」という言葉には「資産」や「財産」といった意味があります。
ここで言うIT「資産」とは、パソコンやサーバといったハードウェアのほか、CRM・ERPといった基幹システムやオフィスソフトなどのソフトウェア、各種ライセンスが含まれます。
ITAMは、これらのIT資産を計上、デプロイ、維持、アップグレード、維持、破棄までのプロセスを追跡します。利用状況のモニタリング、及びメンテナンス計画の策定などを含みます。
前提として、IT資産は使用期限があります。サポート期限切れ・ライセンス期限切れのソフトウェアや端末を使い続けると様々なリスクをはらみます。
企業の持つIT資産が複雑化した2024年現在、このITAMの取り組みは、会社の持つIT資産全体の価値を最大化し、コストを削減することに貢献するプロセスとして注目されています。
世界規格であるITIL 4において、ITアセット管理はサービス運用の根幹として位置付けられています。「サービス管理プラクティクス」としてその必要性が強調されています。ITインフラの健全性を保ちつつ、組織全体の効率と生産性を向上させるためには、きちんとしたITアセット管理は欠かせないといえるでしょう。
IT分野におけるアセット管理の根本的な目的は、組織にとって価値のあるIT資源を保護し、資産のパフォーマンスを最大化することです。
ここではその目的に基づいて、具体的な観点を3つ説明します。
1つ目は、セキュリティ対策を強化し、サイバー攻撃や情報漏洩などのセキュリティリスクを軽減することです。
以下のことが実現できます。
2つ目はソフトウェアの利用状況を管理することで、企業として不正行動や契約違反等を防ぐことです。
以下のことが実現できます。
3つ目は資産の有効活用による経費削減です。これには、使用されていない機器を社内の適正な利用者に再配備することによるリソースの有効活用・生産性向上や、社内で保有している資産を把握することによる余剰資産の購入回避に伴うコスト削減が含まれまれ、効果的なIT投資につながります。
IT資産の適切な管理は会計上も不可欠です。例えば10万円以上のPCなどIT資産については、製品のライフサイクルを適切に把握・管理し、購入後の法定耐用年数に従って減価償却処理する必要があります。
購入年度や購入金額・使用用途といった情報を適切に管理することは、会計手続きの正確性を保証し、想定以上の課税を回避する上でも非常に重要となります。
アセット管理の対象となる「IT資産」は大きく3つのカテゴリに分けられます。
ここではその3つのカテゴリについて、簡単に説明します。
物理的なIT資産 | 直接手で触れることができる実際のデバイスやハードウェア機器 |
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情報的なIT資産 (デジタルアセット) |
ソフトウェアやデータなど 非物理的ながら企業運営に不可欠なデジタルリソース |
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ライセンスにまつわるIT資産 | 製品やサービスの使用権に関するもので、 これにはソフトウェアのライセンスの他、 クラウドストレージやオンラインサービスの利用権も含まれます。 |
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2024年現在、アセット管理を実施する方法は、企業規模によってさまざまです。インターネット上で、WordやExcelで資産管理台帳のテンプレートを無料でダウンロードでできるため、ドキュメントベースで管理する企業も多いでしょう。また資産管理の一つとして経理部門が担当しているケースもあるでしょう。
しかし現在、IT資産は複雑化しているため、より効率的な管理を実現するIT資産管理ツールが登場しています。従業員が100人以上で、従業員用スマートフォンやデバイスなど複数の機器を管理している組織であれば、ドキュメントベースの管理から専門管理ツールを利用すると、業務効率化だけでなく資産効率化につなげられます。
ここからはIT資産の種類に応じた管理方法について解説します。
物理的なIT資産の管理では、「どの部署で、誰が、どの資産を利用しているのか」について管理します。
特に、資産管理台帳に登録されていない資産(シャドーIT)があった場合、実態を把握していないところでセキュリティリスクが高まるため、全ての資産を正確に登録・管理することが大切です。
< 資産管理台帳の記載項目例 >
情報的なIT資産では、ソフトウェアのインストール情報や運用データを管理します。これらを可視化することで、社内で使われているソフトウェア体系の最適化にも繋げることができます。
資産管理台帳には主に下記の内容を記載します。
< 資産管理台帳の記載項目例 >
ライセンスにまつわるIT資産では、対応するハードウェアやソフトウェアの関連性を含めた管理を行います。ライセンスのうち特に認証情報が流出してしまうと、そのサービスが利用できなくなる可能性もあります。
管理を行う上では紛失・流出時の対応も含めた社内ルールを整えることも大切です。
< 資産管理台帳の記載項目例 >
IT資産管理ツールは、企業が保有する多岐にわたるIT資産を効率的に管理するための専門的なソフトウェアです。その中心的な機能は、IT資産の正確な把握と可視化にあります。
具体的には、社内のネットワークに接続されているPCやサーバー、スマートフォンといったハードウェアの情報を自動的に収集し、モデル名、OS、CPU、メモリ容量などの詳細なスペックを一覧で確認できるようにします。また、インストールされているソフトウェアや利用中のライセンス情報も自動的に検出し、ライセンスの過不足や不正利用を防止します。
さらに、ツールにはセキュリティを強化する機能も搭載されています。例えば、OSやアプリケーションの脆弱性パッチの適用状況を監視し、適用漏れがある端末を特定して自動でアップデートを促す機能は、サイバー攻撃のリスクを低減する上で非常に有効です。また、USBメモリなど外部デバイスの使用を制限することで、情報漏えいを未然に防ぐことができます。
これらの機能によって得られる主なメリットは、コスト削減、セキュリティ強化、そしてコンプライアンス遵守です。不要なソフトウェアライセンスの解約やハードウェアの有効活用によりITコストを最適化できます。また、IT資産の状態を常に最新に保つことで、組織全体のセキュリティレベルを向上させ、情報漏えいなどのインシデント発生リスクを抑えます。さらに、ソフトウェアの利用規約やライセンス契約を厳守することで、法的リスクを回避し、企業の信頼性を高めることが可能です。
IT資産管理ツールを導入する際には、さまざまな課題に直面することがあります。以下に挙げる課題は一例です。事前に把握し、対策を講じることが成功の鍵となります。
IT資産管理ツールは、社内のIT資産を自動的に検出・管理しますが、すべての資産がネットワークに接続されているわけではありません。例えば、オフラインで使用されるPCや、社員の私物端末(シャドーIT)などは、ツールの管理対象外となりがちです。また、組織変更や従業員の異動の際に資産情報の更新が遅れたり、担当者によって管理方法が異なったりすると、データの正確性が失われるリスクがあります。
この課題を解決するためには、まず管理対象の範囲を明確に定義し、定期的な棚卸しやデータ更新のルールを策定することが不可欠です。資産台帳と実際の資産を照合する作業を定期的に行い、ツールが自動で取得できない情報を手動で補完するプロセスを確立する必要があります。さらに、従業員にツール導入の目的を周知し、資産情報の正確な報告を促すための教育も重要です。ツールの機能だけでなく、運用体制まで含めて計画を立てることで、データの精度を高め、IT資産管理の基盤を強固にすることができます。
IT資産管理ツールの導入は、管理部門だけでなく、IT資産を利用するすべての従業員に関わることです。特に、これまで個々の裁量に任されていたPCやソフトウェアの利用方法がルール化されることで、従業員から反発が起きる可能性があります。また、ツールの操作方法が複雑だったり、新しいプロセスが十分に浸透しなかったりすると、形骸化してしまい、導入効果が薄れてしまいます。
この課題を克服するには、従業員への丁寧な説明と、繰り返しの説明、運用の定着に向けた継続的な取り組みが求められます。ツール導入の目的を「業務効率化」や「セキュリティ向上」といった従業員自身のメリットと結び付けて説明することで、協力を得やすくなります。また、簡単なマニュアルを作成したり、定期的な勉強会を開催したりして、従業員がスムーズにツールを利用できる環境を整えることも重要です。
IT資産管理ツールの導入を成功させるためには、自社のニーズに合ったツールを選ぶことが非常に重要です。以下のポイントを参考に、最適なツールを選定しましょう。
IT資産管理ツールには、ハードウェア管理、ソフトウェア管理、ライセンス管理、セキュリティ管理など、多岐にわたる機能が備わっています。自社が抱える具体的な課題を解決するために、どの機能が必須なのかを明確に洗い出すことが、最適なツール選定の第一歩です。
例えば、情報漏えい対策を最優先とするならば、外部デバイスの利用を制限する機能や、従業員の操作ログを取得・監視できる機能が充実しているツールを選ぶべきでしょう。また、コンプライアンス遵守が目的であれば、ソフトウェアのライセンス過不足を自動で検知し、アラートを出す機能が重要になります。
さらに、企業の成長や環境変化に合わせて柔軟に対応できるかどうかも重要なポイントです。現在必要としていない機能でも、将来的に必要になる可能性があります。新しいOSやデバイスへの対応、クラウドサービスの管理機能など、将来を見据えた拡張性やカスタマイズ性に優れたツールを選定することで、長期的な利用が可能となります。まずは、自社の現状を正確に把握し、必要な機能を網羅しているかを確認するとともに、将来のIT環境の変化に対応できる柔軟性があるかを見極めることが成功の鍵となります。
ツールを導入しても、操作が複雑で利用者が定着しなければ、十分な効果は得られません。管理者だけでなく、IT資産情報を更新する現場の従業員も含め、誰にとっても直感的に使えるユーザーインターフェース(UI)を備えているかを確認しましょう。シンプルでわかりやすい画面構成、迷わず目的の機能にたどり着けるナビゲーション、そしてスムーズなデータ入力機能は、日々の運用負荷を大幅に軽減します。無料トライアルなどを利用して、実際に操作性を試してみることを強くおすすめします。
また、導入時の設定や運用中に発生するトラブルに対応してくれるベンダーサポート体制も重要な選定基準です。特に、IT資産管理は企業のセキュリティやコンプライアンスに直結するため、問題発生時の迅速な対応が求められます。日本語でのサポートが受けられるか、専門知識を持った担当者がいるか、問い合わせ方法にはどのような種類があるか(メール、チャットなど)を事前に確認しておくと安心です。サポートの質は、ツールの継続的な利用において大きな影響を与え、万が一の事態にも迅速に対応できる安心感を提供します。
IT資産ツールの導入には時間がかかります。何か月、または何年もかけて導入したIT資産管理ツールがたった2年や3年でリプレイスとならないよう、将来性を考慮しましょう。
IT資産管理ツールの導入には、初期費用だけでなく、ライセンス費用や保守費用など継続的なコストが発生します。単にライセンス料が安いというだけでなく、トータルコスト(TCO)で比較検討することが大切です。
ライセンス体系が自社の規模や成長に合わせて柔軟に対応できるかどうかも確認しましょう。例えば、従業員数が増える見込みがある、会社の合併・大幅な組織変更などが予定されている場合は、ユーザー数に応じて柔軟にライセンスを増減できるプランがあるサービス望ましいです。
さらに、そのツールが将来的に機能追加やアップデートが継続して行われる見込みがあるかどうかも見極める必要があります。IT環境は常に変化しているため、新しいOSやデバイスへの対応、セキュリティリスクへの対策がタイムリーに行われるツールを選ぶことで、長期にわたって安心して利用できます。開発元の企業が安定しているか、ロードマップが公開されているかなども選定の際の判断材料となります。
2024年現在、IT資産は複雑化しているため、より効率的な管理を実現するIT資産管理ツールが数多登場しています。リックソフトは、Atlassian(アトラシアン)社の「Jira Service Management(ジラ・サービスマネジメント)」の企業向け導入支援を行っております。
「Jira Service Management(ジラ・サービスマネジメント)」は、ITIL4に準拠しており、Premiumプラン・Enterpriseプランをご利用のチームは企業のアセット機能がございます。
製品の特徴
Jira Service Managementはサービスリクエスト管理、インシデント管理、変更管理、そしてナレッジマネジメントといった幅広いITサービスマネジメントにも対応しており、これらの機能をシームレスに連携することで、IT運用の更なる効率化にも繋げることができます。
Jira Service Management(マネジメント) | 製品 | リックソフト
さらに、2023年1月のAtlassian Cloudの新機能アップデートによって、Jira Service Managementのフォーム機能がアセットと直接連携できるようになりました。
これにより、例えば社員がPCの貸出申請を行うと同時に、その申請に基づいた利用情報を資産管理台帳に登録するといった連携が可能になります。業務の効率化はもちろん、エラーの削減やプロセスの透明性向上にも大きく寄与する機能と言えるでしょう。
IT環境が複雑化する社会において、アセットの詳細な追跡と管理は企業にとって避けては通れない道です。リックソフトでは、この「Jira Service Management」の導入実績も豊富にあり、ヘルプデスク等を含めた手厚いサポート体制にて社内ITアセット管理の高度化をサポートできます。社内のITアセット管理に課題を感じている場合は、是非お気軽にご相談してみてください。
管理ツールを導入し、効率よくITアセット管理を推進していきましょう!