2023.07.31更新日:2026.04.17
ITサービスマネジメントとは、ITサービスを効率よく適切に管理するための仕組みです。
ITサービスの提供を管理する仕組みや枠組みを指します。2026年現在、ビジネスでも日常でもあらゆる場面でIT化が進み、企業がビジネスを進めるうえで安定したITサービス提供が必須になっています。ITシステム同士が複雑に絡み合った現在、IT運用に課題を抱えている方には、ITIL(アイティル)と呼ばれるガイドラインに準拠した運用をおすすめします。
本ページでは「ITサービスの品質を向上したい」「ITサービスの運用を効率化したい」と考えている方のために、ITILとはどういうものなのか、ITサービスマネジメントシステムにおいてITILがもたらすメリットや重要性についてご紹介します。ぜひ最後まで読んで、ITILに準拠したITサービスマネジメントシステムの導入を検討してみてください。
ITILとは「Information Technology Infrastructure Library」の略で、ITサービスマネジメントにおける ベストプラクティス(成功事例) をまとめた書籍群、いわゆる教科書のようなものです。ITIL 4では、従来のプロセス重視から、価値共創を目指す「サービスバリューシステム」へと概念が変化しました。2026年から1年かけて、デジタルファーストかつAIネイティブの考えに基づいた設計に進化したITIL®version 5が公開される予定です。
ITSMとITILは、しばしば「目的」と「手段」の関係に例えられます。ITSMは、ビジネスのニーズに合わせてITサービスを適切に管理・提供し、顧客価値を最大化させるという「活動そのもの」を指します。対してITILは、その活動を効率的に実現するための「知識体系」です。
サービスデスク運用において「いかに迅速にユーザーの困りごとを解決するか」というITSMの目標に対し、ITILは 「インシデント管理」や「サービスリクエスト管理」といったプラクティス(型)を提供します。 ITILのフレームワークを活用することで、場当たり的ではない、世界標準の高品質な運用プロセスを最短距離で構築することができます。
ITILは1989年、英国で経済不況を打破するため、ITマネジメント改革の一環として成功事例をまとめたのが始まりです。
最初のバージョンであるITIL®V1がリリースされ、その後、ITサービスの変化に対応するためV2、V3、V4とバージョンアップが行われてきました。日本語に対応している最新版であるV4は合計6冊の書籍と34冊のプラクティス集から構成されています。
英語版は2026年2月に最新版となるITIL® V5がリリースされ、デジタル製品とAI活用を重視した内容になっています。
DXの促進など時代の変化に合わせてITIL®V3はITIL®4として刷新され、DX時代に必須となる、アジャイルやDevOps、リーン、ガバナンスといった4つの要素が新しく追加されています。また基本となる考え方も変化しており、V3以前では提供するサービスに焦点を当てていましたが、ITIL®4では「サービスプロバイダーとサービス消費者がともに価値を共創していく」ことを目的とする考え方に変わりました。
その他にも、ITサービスマネジメントにおいて重要になるインシデント管理・問題管理・ナレッジ管理など「プロセス」と呼ばれていたものを、「プラクティス」と定義した点にも変化があります。ITIL®4では「プラクティスを組み合わせて運用することこそがITサービスマネジメントの効果を最大化させる」としています。
プラクティスは「一般管理」、「サービス管理」、「技術管理」の3群に分けることができます。それぞれ密接に連携し、リソースを有機的に組み合わせることで、顧客と共に価値を共創することを目指します。
組織全体の基盤となる活動群に対するプラクティスです。ITサービスに限定せず、ビジネス全般で不可欠な「継続的改善」によるサービス品質の向上や、「リスク管理」による不確実性の制御など、運用の健全性を支える重要な役割を担います。
一般管理プラクティスには以下の14個のプラクティスが該当します。
ITサービスの提供と価値創出に直結する活動群です。「インシデント管理」が迅速な復旧で負の影響を最小化し、「変更実現」がリスクを抑えつつスムーズな改善を実現。これらが連携し、安定したサービス品質と顧客満足を支えます。
以下の17個のプラクティスが該当します。
ITインフラやソフトウェアを支える技術領域の活動群です。「展開管理」が新機能を安全にリリースし、「インフラストラクチャ管理」が土台を最適化します。
高度な技術力でサービス提供を支え、顧客価値創出の基盤となります。
成功事例であるITILに沿ったITサービスマネジメントは理想的であるものの、実際には多数のプラクティスを最初から全て実現するのは難しいです。そこで手助けになるツールが、ITILに準拠したITサービスマネジメントシステム(ITSMS)です。顧客対応の迅速化とサービス品質の向上が図れ、無駄な作業を省き、コスト削減に直結します。導入後は標準プロセスを定着させ、継続的改善を回すことで、組織全体のITレベルが底上げされます。
ITILのベストプラクティスを組織に適用することで、主に以下の5つのメリットが得られます。
実際の成功事例として、ITILベースの運用へ転換した大手メーカーが、システム稼働率を99.9%まで引き上げ、年間数千万円規模の損失回避に成功した例もあります。
ITILの導入は、場当たり的な運用が招く「現場の疲弊」を解消するための強力な武器となります。
まず、サービス品質のバラつきについては、「SLA(サービスレベル合意)」を定義し、モニタリングを仕組み化することで解消されます。また、情報共有の漏れによるコミュニケーション不足 は、インシデントや変更要求を共通のプラットフォームで管理し、「共通言語(用語の定義)」を持つことで円滑化します。
さらに、日本の現場で深刻な「手順のブラックボックス化」という課題に対し、ITILのナレッジ管理を適用。手順書をデジタル化し、検索性を高めることで、ベテラン社員の離職や異動に伴う業務継続リスクを最小化し、持続可能な運用組織へと変貌させることが可能です。
ITサービスマネジメントシステムの導入を行う際は、注意点やリスクの回避策を考慮しておきましょう。その際に、ITILの考え方が参考になります。
準備が足りないまま導入してしまうと以下のような失敗につながる恐れがあります。
こういった状況に陥らないためには、ITIL®4で定義されている従うべき原則に配慮することが重要です。
| 従うべき原則 | 説明 |
|---|---|
| 価値に注目する | 利害関係者にとっての価値に、それが直接的であろうと間接的であろうと、関連付ける必要があります。「価値に着目する」という原則には、顧客とユーザの経験を含む多くの観点が内包されます。 |
| 現状からはじめる | 新しいものをゼロから開始、また構築するのではなく、すでにある利用可能なものを活用することを検討します。現行のサービス、プロセス、プログラム、プロジェクトおよび人材などの中に、求められる成果を生み出すために利用できるものが十分に存在している可能性があります。現状に直接目を向けて調査し、完全に把握する必要があります。 |
| フィードバックを元に反復して進化する | 何もかもを一度に片づけようとしてはいけません。大規模な取り組みであっても、反復的な活動によって達成する必要があります。作業をより小さく扱いやすいセクションに分割し、実行と完了をタイミングよく行えるようにすることで、一つ一つの取り組みに集中しやすくなります。 それぞれの反復の実行前、実行中および実行後にフィードバックを利用して、状況が変化している場合でも、適切なアクションを集中的に実行できるようにします。 |
| 協働し、可視性を高める | 境界を超えて協力することで、より大きな賛同が得られ、達成目標への関連性が高まり、長期的な成功の可能性が高まります。達成目標を実現するには、情報、理解および信頼が必要です。作業および結果を可視化し、隠れた意図を入れないようにし、情報を可能な限り共有する必要があります。 |
| 包括的に考え、取り組む | サービス、またはサービスの提供に使用される要素が、単独で存在することはありません。組織が、サービスの一部ではなく全体に対して取り組まなければ、サービス・プロバイダとサービス消費者が得られる成果は貧弱なものになります。 内部顧客および外部顧客に結果をもたらすには、情報、技術、組織、人材、プラクティス、パートナ、合意を効果的かつ効率的に管理し、動的に統合する必要があります。定義された価値を提供するには、こういったすべてのことの調整が必要になります。 |
| シンプルにし、実践する | 価値をもたらさない、あるいは有用な成果を生み出さないプロセス、サービス、アクション、測定基準は、除外排除してください。プロセスまたは手順のステップは、達成目標に必要な最小限に留めます。結果をもたらす実践的なソリューションを生み出すために、常に成果ベースの思考を使用します。 |
| 最適化し、自動化する | あらゆる種類のリソース、特に人材を最大限効果的に利用すべきです。無駄をすべて排除し、技術で解決できることには技術を利用します。そうすることで人が関わるのは、本当に価値に貢献する場合に限ります。 |
単にシステムやサービスを変えるだけでなく、それを利用する人の教育や、システムを利用した業務の進め方の改善などを並行して進める必要があります。
ITILに準拠したITサービスマネジメントを行いたいが、何から始めて良いのかわからないという方は、まずはサービスデスクの改善・導入から始めましょう。
ITILではITサービスマネジメントの核となる機能を「サービスデスク」と定義しています。サービスデスクの改善・導入には、サービスリクエスト管理、サービスレベル管理、インシデント管理などのプラクティスの適用が有効です。サービスデスクの改善を行うことで顧客満足度の向上にもつながります。
リックソフトが導入支援する「Service Collection」は、ITILに準拠したインシデント管理・問題管理・変更管理・構成管理などを行うことができるヘルプデスクシステム「Jira Service Management」が含まれます。ヘルプデスク業務に必要な機能が網羅されており、「問い合わせ対応の時間の短縮」や「問い合わせ対応の漏れを防ぐ」といった従来の課題を解決することができます。
ITILに準拠したITサービスマネジメントの一歩を踏み出したい方は、無料トライアルもあるのでぜひご検討ください。環境の構築支援も承っております。
ITIL®V4準拠のJira Service Managementは、標準でサービスリクエスト管理やインシデントのテンプレートを備え、世界標準の運用を即座に開始できます。最大の特徴は、ノーコードで設定可能な「自動化」と「柔軟なカスタマイズ性」です。SlackやTeams、ナレッジ基盤のConfluenceと強力に連携し、アラート通知や回答候補の自動提示を実現。IT資産管理・構成管理のマスタデータとなるアプリ「Assets」と併せて使うことで、構成アイテムの依存関係も視覚的に把握可能です。
【監修】
リックソフト株式会社 サービスマネジメント課
西村扶美枝
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