2023.07.31更新日:2026.02.20
システム開発やソフトウェア開発の開発手法の中で、市場やユーザーのニーズに合わせた対応ができるアジャイル(Agile)が注目されています。
本ページでは、アジャイル開発の概要からメリット・デメリット、具体的な手法をご紹介します。開発プロジェクトや組織運営にアジャイルを取り入れたい方は、ぜひご一読ください。
アジャイル(agile)とは現在主流になっているシステムやソフトウェア開発手法の一つで、計画からテストといった工程を短いサイクルで繰り返しながら開発を進めていくのが特徴です。もともとはソフトウェア開発手法の一つを指す言葉だったのですが、現在では製造業や営業職など他業界・他業種でも、プロジェクト運営の方法として使われています。
アジャイルは2001年に提唱されたのが始まりで、「アジャイルソフトウェア開発宣言」の中で指針となる4つの価値観と12の原則が定義されています。ここでは4つの価値観をご紹介します。
このようにアジャイルではチームのメンバーや顧客との密なコミュニケーションを重視しており、急な仕様変更による情報共有や柔軟な 対応が求められることから、 綿密なチームワークが欠かせません。
アジャイルの基本的なステップを説明します。
その後、最初に決めたテーマの優先順位の見直しなどをしながら、次のイテレーションに着手していきます。以上がアジャイルの基本的なステップです。
ウォーターフォール開発はアジャイルと異なり、全ての機能や設計を具体的に定めてから実装に着手します。Waterfall(=滝)という名前の通り、上から下に順番に設計から開発を進めていく手法です。プロジェクト開始時に全体の作業量を把握することができるため、予算の見積もりやスケジュール管理がしやすいといったメリットがあります。一方で、全ての機能を開発前に定めているため開発途中での仕様変更を行う場合は、コスト増加や納期の延長といったデメリットがあります。
アジャイルはウォーターフォール開発の課題に対応した開発手法と言えます。
開発プロジェクトでは「プロジェクトの特性」と「開発手法」がマッチしているかどうかを見極めることが大切になります。それではどのようなプロジェクトがアジャイルに適しているのでしょうか。ここではアジャイルのメリット、デメリットについて解説します。
メリットの1つ目は、不具合や修正に柔軟に対応ができることです。
アジャイルではイテレーションごとに「計画→設計→実装→テスト→リリース」を行うため、イテレーションごとになんらかの成果物が出てきます。その成果物をもとにすぐに機能追加や優先順序の変更を行えます。不具合や急な仕様変更にも柔軟に対応できます。
2つ目は開発スピードが速い点です。
先述した4つの価値観にもあるように、アジャイルではドキュメント作成よりも計画~リリースのサイクルを回し続けることに重点を置いています。事前に仕様をすべて固めて文書化するのではなく、変化に応じて仕様を具体化していくため、手戻りを抑えやすく、結果としてスピード感のある開発が可能になります。
3つ目は顧客のニーズをすぐに反映できるところです。アジャイルのチームは顧客もメンバーとして立場を超えて協働するため、テスト時に実際の機能や使用感を都度試すことができます。仕様の変更や要求との相違を感じた場合、早い段階で修正対応ができるため、顧客のニーズを色濃く反映した開発が可能となります。
アジャイルではイテレーションごとに詳細なスケジュールを定めていくため、プロジェクト全体のスケジュールをコントロールするのが難しい場合があります。
また顧客のニーズを重視するあまり、開発の方向性が分からなくなるという問題が発生することもあります。
アジャイルではイテレーションごとの成果物をもとにフィードバックが得られるのがメリットです。しかし、ステークホルダーにコミュニケーションのための時間を捻出してもらう必要があります。ステークホルダー側に「より良いものを・満足いくものを作るためにアジャイル開発を行う。そのために頻繁にフィードバックをもらう必要がある」と合意が欠かせません。
成果物に対してフィードバックをもらい、関係者間でコミュニケーションをとることがアジャイル開発の強みでもあります。関係者とスケジュールをあわせるのが難しい場合、非動画型コミュニケーションツールなどを活用しましょう。2026年現在、非同期型の動画共有ツール「Loom」など、双方向で動画コミュニケーションができるツールもあります。ツールを活用して解消していきましょう。
アジャイルにも一長一短があり、とくに日本では一つの開発プロジェクトの中でウォーターフォール型とアジャイルのメリットを組み合わせるハイブリッド開発が選択されています。
アジャイルが適しているのは、要件や優先順位が変化する可能性を前提とし、その変化に柔軟に対応する必要があるプロジェクトです。以上のメリット・デメリットを考慮した上でその採否を判断すると良いでしょう。
ここからはアジャイルの代表的な開発手法「カンバン」「スクラム」「エクストリーム・プログラミング(XP)」「ユーザー機能駆動開発(FDD)」の4つを紹介していきます。それでは一つずつ手法を見ていきましょう。
カンバンとは、ボード上でプロジェクトの進捗(ステータス)視覚的に管理する手法のことです。カンバンボードでは、担当者や納期、作業工程のTODOや作業ステータスなどの項目が管理できます。
カンバンボードによって、プロジェクトの進捗や優先度の可視化できるというメリットがあります。
タスクをひとつの枠でとらえ、左(Todo)から右に(Done)の列に変えていきます。真ん中の「In Progress(進行中)」タスクが大量になると、フローの滞留が起きてしまうため、上限(WIP制限・仕掛品制限)をもたせ、各人が目の前の タスクに集中できるよう促します。
カンバンボードを使うと、「どの工程でタスクが滞留しているか」がひと目で分かるため、リードタイムを短縮するための改善ポイントが見つけやすくなります。
スクラムはアジャイル開発の中でも有名な手法で、チームで効率的に開発を進めるためのフレームワークのことを指します。ラグビーのスクラムが語源になっています。優先順位を決めるPO(プロジェクトオーナー)、支援役のSM(スクラムマスター)、実行を担う開発者が一丸となって作業を進める点が特徴です。
スクラムではイテレーションのことを“スプリント”と呼び、一定の期間で開発を進めます。
スプリントの中でメンバー自身が計画の立案や進捗管理を行うため、メンバー間でのコミュニケーションはとても重要になります。計画、日次の共有、成果の確認、振り返りの順でスプリントを回し、チーム自ら改善を繰り返しながら価値を最大化させます。
スクラムでは作業計画や変更を管理するためにバックログを作成し、スプリントをメンバー内で管理していきます。
エクストリーム・プログラミングは、エンジニアが最高のパフォーマンスを出せるように、技術的な習慣を極限まで高めた 開発プラクティス です。Extreme Programmingと表記し、XPと略されることもあります。開発途中の仕様変更や機能追加にも柔軟に対応することを重視している点が特徴です。この手法では、4つの価値をチーム内で共有します。
エクストリーム・プログラミングではこれらの価値を重視しながら開発を行うことで、柔軟性の高い開発を進めることが可能となります。プラクティスは4つの価値を支えます。テスト駆動開発は品質を担保して「勇気」を与え、ペアプログラミングは知識共有を促します。近年はAIを相棒にペアプロを行い、即時のフィードバックを得て開発を加速させることも有効です。
ユーザー機能駆動開発はFeature Driven Developmentの頭文字をとってFDDと略されることもあります。この手法は顧客にとって価値のある機能を重視した手法です。
顧客のビジネスを理解した上で、必要とする機能の洗い出しを行い、イテレーションを繰り返すという点が特徴です。顧客が必要とする機能のみの実装を行うためシンプルで機能的なサービスの開発ができる点がメリットとして挙げられます。またユーザー機能駆動開発では、開発する機能ごとにチームを分けるため、大規模な案件にも対応しやすいといったメリットもあります。
導入は、まず現状評価と意識改革から始め、専任チームを編成し基礎教育を行います。次に、小 さく成功を積み上げるため、社外に影響せず、限定的で検証しやすいパイロットプロジェクトを選定します。 その成果をもって、段階的に拡大 していきます。
導入前に、組織の文化や意思決定のスピードがアジャイルの価値観(透明性や検査、適応)に適合するかを評価します。
特に、失敗を許容し、現場に権限を委譲できる土壌があるかが鍵となります。準備段階では、経営層の理解とコミットメントを確保し、導入の目的を明確にします。「今回はアジャイル開発という特別な手法を使うため、ご理解お願いします」というステークホルダーとのすり合わせは必須です。
自社のプロジェクト特性に合わせて手法を選びます。チーム運営や役割を重視し、汎用性を求めるなら、世界で最も選ばれている「スクラム」が最適です。
一方で、エンジニアの技術力向上や極限の柔軟性を求めるなら「XP」、タスクの視覚化やフローの最適化を優先するなら「カンバン」が向いています。
選定時は手法の型に固執せず、プロダクトの複雑さや納期、チームの習熟度を考慮し、最もボトルネックを解消しやすいものを選び、必要に応じて組み合わせて適用します。
アジャイルの本質は、スプリントや機能実装の節目で行う「ふりかえり(レトロスペクティブ)」にあります。単なる「あれがよかった」「だめだった」という反省会ではなく、KPT(Keep/Problem/Try)などのフレームワークを用い、良かった点と改善すべき点を客観的に抽出します。
重要なのは、個人を責めず、プロセスをどう改善するかに集中することです。小さな改善を次のイテレーションの計画に即座に取り入れる「継続的な自己改善」のサイクルこそが、組織の機敏さを支えます。
ここまでアジャイルのメリットやデメリット、従来の開発手法のウォーターフォール型の違いを解説してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか。
「アジャイルでの開発に取り組みたいが、実際にどういった 運営体制 で行えばよいのか分からない」という方にぜひ知っていただきたいのが、チームの作業を可視化・最適化するワークマネジメントツールの「Jira Cloud(旧名称Jira Software Cloud)」です。世界10万社に導入されているITツールです。
Jira Cloudはアジャイルに特化した開発ツールで、本ページで紹介した「カンバン」や「スクラム」といった代表的な手法に応じたテンプレートや多様な分析機能を提供しています。バックログを積み上げ、期間(イテレーション)ごとにバックログを振り分け、ストーリーポイントを設定し、スプリントを進めていく…というように、スクラムの作法に沿っているため、スクラムで何をやるべきかわからないチームにもおすすめです。
プロジェクトごとにプロジェクトスペースを切り分けることができるため、段階的なプロジェクト運営が可能です。
Jira Cloudを活用して アジャイル開発を始めましょう!
ウォーターフォールは工程を一つずつ完了させる「計画重視」で、大規模・安定案件向きです。対するアジャイルは、短期間で設計からテストを繰り返す「変化対応重視」で、柔軟な仕様変更や迅速なリリースに向いています。
まず第一に、アジャイル開発はステークホルダー(例:プロダクトを実際に利用する部署の代表者や顧客営業担当、開発者)全員が頻繁にコミュニケーションをとる必要があるプロジェクトであると合意をとることです。実際に集まって顔を合わせる時間調整が難しい場合、オンライン会議やLoomなどのシステムで解消できます。
【監修】
リックソフト株式会社
辻大輔
資格情報
